サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会が14日に開幕する。6大会連続出場の日本は、今年4月にバヒド・ハリルホジッチ氏から西野朗氏へと監督を交代させる荒療治をして大会に臨む。低い下馬評を覆し、西野ジャパンは世界を驚かすことができるだろうか。元日本代表の伊東輝悦氏(J3アスルクラロ沼津)が、43歳の今も現役を続けるアスリートの視点から、日本の活路をヨミウリ・オンライン(YOL)の取材に示した。(聞き手=読売新聞メディア局編集部・込山駿)

まずは守備、不用意な反則は禁物

 コロンビア、セネガル、ポーランド。グループリーグで日本は、3試合とも格上と対戦する。サッカーで「番狂わせ」を起こそうとするなら、まずは守備の安定が求められる。

 5月以降の日本の強化試合では、不用意な反則でペナルティーキック(PK)やフリーキック(FK)を与えて失点を重ねたのが気にかかる。ガーナ戦は序盤に槙野がゴール正面で相手選手を倒してFKを、後半には飛び出したゴールキーパー(GK)川島が相手選手と接触してPKを与えた。スイス戦で先制PKを与えた場面は、日本陣内の右サイドで酒井高がマークを緩め、相手をスピードに乗せたことが、吉田の反則を招いた。

 本大会で対戦する3チームの、ああいう絶好機を逃さず決めてくる力は、ガーナやスイスを上回るだろう。日本は、選手一人一人が守備の意識を高めて本大会に臨む必要がある。

乾と香川が奮起、心配される本田の調子

 攻撃面では、本大会前の最後の強化試合だった12日のパラグアイ戦で、4―2の快勝を収めた。司令塔に香川を入れるなど、前の2試合と先発をほぼ全員入れ替えた一戦。乾が2得点、香川が1得点を決めたのは、相手のレベルやコンディションはともかく、明るい材料だ。乾には、W杯本大会でも活躍を期待したい。連係プレーを熟成させるには時間が足りない今、トリッキーな個人技で攻撃に変化を与えられる彼が、チームを活性化させている。

 攻撃の司令塔は、パラグアイ戦で結果を出した香川が本大会の先発の座に近づいたかもしれない。ガーナ戦とスイス戦で担った本田は、実績のある選手だが、このまま調子が上がらないようなら心配だ。相手ゴール前へ入っていくプレーが少なく、ボールを奪われる場面も多かった。

奇跡を生む西野ジャパンの分析力

 もう22年前の経験になるが、アトランタオリンピックのブラジル戦で、自分たちが勝てた「マイアミの奇跡」の最大の要因は、失点しなかったことにある。国際大会の初戦で、点が取れない時間が続けば、強い相手も必ず焦る。あの時も、ブラジルに焦りが出てきたのを感じ始めた後半の中頃、自分が中盤から相手ゴール前まで駆け上がって、決勝ゴールを押し込めた。ずっと守備に追われる展開だったが、自分たちは攻撃の意思を失っていなかった。西野監督やコーチから伝えられたブラジル守備陣の弱点を頭に入れ、逆襲のスキを狙い続けていたから勝てた。

 分析力と、弱点をきっちりと突くしたたかさは、西野監督が率いるチームの特徴であり、日本サッカー全体の強みでもある。今回のW杯でも、代表チームは対戦相手を綿密に分析し、弱点を見つけ出しているはずだし、選手たちはきっと明確な作戦を授かってピッチに立つ。

 それをフルに生かせないようなメンバーではない。厳しい状況には違いないけれども、日本が一丸となってグループリーグを突破することを、自分は信じている。(談)

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