能力を発揮できなかった本田、片鱗を見せた香川
 
大迫と交代した岡崎は「前半からチームとしてやり切って、ディフェンスも守備もアグレッシブにできた。こういった雰囲気でやり続けることが勝利に近づくと思う。
厳しい状況かもしれないですけど、ワールドカップ本番が一番大事。初戦のコロンビア戦を含めて勝利を目指したい」と、パラグアイ戦の試合の入り方に関して手応えを口にしていた。

その他にも、乾は2ゴールという結果だけでなく、果敢な突破と攻撃の起点になることでチームを牽引した。交代出場した宇佐美貴史と比較して、どちらがスタメンにふさわしいか明らかだ。

同じことはトップ下のポジションを争う香川と本田にも当てはまる。体幹の強さを生かしたキープ力が持ち味の本田は、スイス戦でその能力を発揮できずに終わった。
対照的にワンタッチプレーを得意とする香川は、スイス戦でその片鱗を見せ、格下のパラグアイ戦では2アシスト1ゴールと結果を残した。

スイス戦のスタメンから酒井高徳を残し、10人を入れ替えた西野監督。後半にはGK東口順昭に代え中村航輔まで起用し、登録メンバー全23選手に出場機会を与えた。
これはこれで異例なことでもある。しかし、そのおかげで選手それぞれのコンディションを見ることができたのは記者にとっても収穫だった。

W杯の日本代表の初戦までは、まだ1週間ある。最低でもドローが必要なコロンビア戦はコンディションの良い選手を使うのはもちろんだが、
パラグアイ戦を見て感じたのは、ベテランよりも若手選手を積極的に起用した方がいいのではないかということだ。
その理由として、相手がどうであれチェレンジするするしか選択肢はないので、臆することなくプレーしていたからに他ならない。

岡田武史・元日本代表監督は5月24日に開かれたトークショーで、W杯のグループリーグ突破に必要なこととして「化ける選手」の出現も自身の経験から指摘していた。
その可能性を秘めているのは、今大会がW杯初出場となる乾であり武藤、原口元気、柴崎岳あたりなのではないだろうか。それは14日から始まるカザンでのキャンプで明らかになるかもしれない。

六川亨

1957年、東京都生まれ。法政大学卒。『サッカーダイジェスト』の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後『CALCIO2002』、『プレミアシップマガジン』、
『サッカーズ』の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班