6/12(火) 16:56配信
 エンゼルス・大谷翔平投手(23)に下された「右肘の内側側副靱帯の損傷」の診断は、全米および日本列島に衝撃を与えた。7日(同8日)に「PRP注射」と呼ばれる治療を受けており、3週間後の再検査で今後の方針を決めるが、復帰まで1年以上かかるとされる靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を余儀なくされる可能性もある。かつてレッドソックスなどで活躍し「PRP注射」の体験者である岡島秀樹氏(42)が、その実態と効果を明かし、故障の要因を分析した。

 大谷が命運を託した「PRP注射」は、自分の血液を採取し、遠心分離機にかけて高濃度の血小板を含む血漿(けっしょう)を精製して患部に注入。自己治癒力を利用する療法だ。自分の血小板を使用するため、副作用やアレルギーのリスクが少ないとされる。

 大谷はメジャー移籍前の昨年10月にも同じ箇所とみられる右肘靱帯に損傷がみつかり、PRP注射を受けたが、当時の損傷レベルは最も軽い「グレード1」。現在は中程度の「グレード2」に悪化しているという。

 岡島氏は「去年受けて効果を感じたから、またやろうとなったんだと思います」と分析。

 自身はレッドソックス時代の2009年シーズン終盤、右脇腹の腹斜筋を肉離れ。当時最先端の新治療法だったPRP注射を受けた。

 「すぐに戦列復帰できたので、(治療を)気づかれもしなかった。初めて話しますが、プレーオフも視野に入れてPRP注射を打ちました。(靱帯より)僕のような筋肉系の方が治りが早いそうです」と明かす。

 ただし、「太い注射針を使うので、とにかく痛い。時間は数十秒ですが、それがものすごく長く感じました。その日はムチャクチャ痛くて、立てないぐらい。2日ぐらいは痛みが続き、長い人は1週間ぐらい痛いようです」。想像を絶する激痛を伴ったという。

 当時の同僚で右肘を痛めていた田沢純一投手(現タイガース)も一緒にPRP注射を受けたが、「田沢君は肘がすごく腫れて、炎症を抑えるためにアイシングをしていました」というから回復に個人差がある。

 結局、田沢の場合は球威が戻らず、翌年の春季キャンプ後トミー・ジョン手術に踏み切り、復帰まで1年以上を要した。

 一方、ヤンキースの田中将大投手(29)は14年、手術を避けて7月14日にPRP注射を受け、約3週間のノースローを経て8月4日にキャッチボールを再開。9月21日のブルージェイズ戦で75日ぶりにメジャー復帰を果たしたが、3週間後の大谷にどんな診断が下されるかは予断を許さない。

 米スポーツ専門局ESPNは、08年以降にPRP注射を受けた33選手中、48・5%の16選手が最終的に手術を受けたと報じている。

 また、大谷が肘を痛めた要因はスプリットの投げ過ぎともささやかれているが、岡島氏の見方は違う。

 「スプリットを投げるときはそんなに滑らない。肘よりも手首を痛めやすいんです。それよりもスライダーやカットボールの方が滑るので、肘に負担がかかります」と説明。「僕は日本ではカーブを得意にしていましたが、滑るので投げなくなり、すっぽ抜けにくいスプリットを多投しました」とも。大谷も復帰後は投球スタイルの変更を検討した方がいいかもしれない。

 大谷は6日(日本時間7日)のロイヤルズ戦(アナハイム)に先発したが、5回にマウンドに上がった直後緊急降板。

 岡島氏はこのときから「球速こそ出ていましたが、真っすぐも抜けたり、ワンバウンドする球があった。降板したときに指先に息をかけていて、寒いときではなかったので『おかしいな?』と思いました。肘の影響で、指先の感覚が悪くなっていたのかもしれません」と異変を感じ取っていた。

 3週間後、仮に大谷が手術を回避する決断をしたとしても、戦列復帰は容易ではない。「3週間ノースローで下半身のトレーニングぐらいしかできないので、投げる筋力が落ち、また1からになる。時間はかかるでしょう」と指摘する。

 「原因は(日本の物に比べて)滑るメジャー使用球と、硬いマウンドの2点だと思います。僕は米国の環境とボールに慣れるまでは打者に専念し、慣れたら二刀流にした方がいいと思っていました。始めから頑張りすぎた。(故障は)心配していましたが、思ったよりも早かったですね」と残念そうに語る。

 今後、大谷をめぐって「やはり二刀流は無理。どちらかに専念すべき」との論調が強まる可能性もある。いずれにせよ、復帰へのプロセスは慎重に、岡島氏のような経験者の意見も聞きながら行うべきではないか。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00000017-ykf-spo