【あの代表監督の成功と失敗】バヒド・ハリルホジッチ(下)

 バヒド・ハリルホジッチ監督(65)=当時=はW杯ロシア大会出場を決めた前後から、日に日に不機嫌になっていった。特に本田(パチューカ)に対する冷遇ぶりは明白だった。

 ある日、記者が「本田がメキシコであれだけ活躍している(公式戦34試合出場13得点)のだから、ハリルさんも1度直接見に行ったらどうか」と質問した。

 「ホンダ」、「メキシコ」というワードを耳にしているうちにみるみる顔が紅潮し、「なぜバヒド(自分)がメキシコまで行かなきゃいけない? 私のスタッフがきちんと見ている。なぜ君はそんなにホンダのことが好きなのか?」とぶち切れた。ハリル戦術に異議を唱える本田に関する質問には、とりわけ神経質になっていた。

 「私のベストゲーム」と胸を張ったのは、W杯出場を決めた昨年8月31日のアジア最終予選・豪州戦(埼スタ)。スタメンに抜擢したFW浅野(ハノーバー)とMF井手口(レオネサ)のゴールで快勝し、ベンチを温めた本田、香川(ドルトムント)には出番がなかった試合だ。

 しかしハリル・ジャパンはその後、不振に陥る。国内組だけで臨んだ昨年12月の東アジアE−1選手権では、ホーム(味スタ)にもかかわらず宿敵韓国に1−4の惨敗を喫した。韓国戦の4失点は38年ぶりだったが、ハリル監督は「海外組を含めたフルメンバーで戦っても、韓国に勝てたかどうかわからない」とコメント。この言いぐさに日本協会幹部が激怒し、関係は一気に冷えていった。

 普段からパワハラ的な発言が多く、解任直前の3月の国際親善試合では、開始前にスタメン起用した選手に対し「きょうは使うが、W杯に連れていく気はないから」と言い放ったこともあるという。イレブンの信頼を失ったのも当然だ。

 本田に関しては「3月の欧州遠征に本田を呼んだのは、いかにダメな選手かをみせつけるためだ」と親しい関係者に明かしていた。ハリル氏が監督を続けていたら、本田、香川、そして岡崎もW杯ロシア大会には呼ばれなかっただろう。

 電撃解任を受け、4月27日に300人を超える報道陣、30台以上のテレビカメラの前で約1時間半の「反論会見」を開いたハリル氏。そして5月24日には、日本協会の田嶋幸三会長と同協会を相手取り、東京地裁に民事訴訟を起こした。あくまで名誉回復が目的と強調し、慰謝料1円、謝罪広告を全国紙と日本協会のサイト上に掲載することなどを求めている。

 この解任は成功だったのか、失敗だったのか。ロシアW杯での西野ジャパンの結果がその答えになる。(夕刊フジ編集委員・久保武司)=終わり

夕刊フジ 6/11(月) 16:56配信
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