[国際親善試合]日本0-2スイス/6月8日/ルガーノ(スイス)
 
 アクシデントが起きたのは38分だった。4-2-3-1の1トップに入っていた大迫勇也が接触プレーで腰を痛め、ピッチに座り込む。やや慌てた様子を見せるベンチのなかで、武藤嘉紀が着々と準備を進める。アクシデントから2分後にピッチへ送り込まれた。
 
 投入直後の武藤が心掛けたのは、守備のバランスだった。
 
「前半は守備のところで行く時と行かない時が曖昧になってしまって、押し込まれる時があった。まずは自分が入った時はしっかりと前からプレスに行くことと、無駄追いはせず、しっかりと(プレスを)掛ける時は掛けるということを意識した」
 
 42分に先制を許した日本は、1点を追うべく攻勢を強めたいところだったが、引いて守るスイス相手にシュートまで持ち込めない。最前線でゴールを期待された武藤は時間とともに孤立し、試合から消えてしまう。試合後には、苦しい胸の内を明かした。
 
「自分が下がって(ボールを)もらうべきなのか、前に張っているべきなのか。ボールに触る回数が少なかった。自分まで落ちてしまうと真ん中に人がいなくなってしまう。そこの難しさはある。1トップで、守備の時間が長くなるので消えている時間帯が多くなると思うが、最後のところで点を取らないといけないし、それが日本の勝利に繋がる」
 
 そう語る武藤は、決してゴールだけにこだわるエゴイストではない。「いくらボールを触る時間が少なくても、焦れずに前からプレスに行って、守備に追われてもやっぱり最後に決め切れるのがベスト」と理想は高い。ただ一方で、「前半のサコくん(大迫)もそうだが、ずっと走っていた分攻撃に力が残っていなくて、裏に抜け出せないというのがあった。無駄に走ってしまうと、点を取る力が残らない。そこは注意しないといけない」と力の入れどころに思案を巡らせる。
 
 つまりスイス戦の武藤は、「ボールになかなか触れない展開で下がってボールをもらうべきか、最前線で張ってボールを待つか」「最後の場面でゴールを決めたいが、守備にも奮闘しないといけない」というふたつのジレンマを抱えていたのだ。
 
 このジレンマを解決するために必要なことは――。武藤は仲間とのコミュニケーションに活路を見出すという。特に攻撃のジレンマは、チームメイトとすでに話し合いを行なっているようだ。
 
「元気くん(原口)とも話したが、ドリブルして行って、相手が強いほど縦に抜け切れないので、股を狙ってクロス(を上げる)。ひとつ入れば自分がドフリーの時があって、元気くんもそこを分かっていて、しっかり話し合えているなと」
 
 また武藤は、攻撃のバリエーションを多彩にするために、「アーリークロスを増やした方がよい」と考えている。「何かが起きるし、ブロックを作られた状態でのクロスというのは可能性がない。アーリークロスが一番得点のチャンスがある」からだ。
 
「そういった練習もしている」と本人もコメントしており、あとはその精度を高めるだけだ。長友佑都や酒井宏樹、酒井高徳ともコミュニケーションをしっかり取れれば、新たな攻撃パターンの誕生に期待が高まる。
 
 大迫のコンディション次第では、12日のパラグアイ戦でスタメン起用される可能性は十分あるだろう。限られた時間で、チームメイトとどれだけすり合わせられるか。そこをクリアできれば、背番号13が決定力不足に喘ぐ西野ジャパンの救世主になるかもしれない。

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