スイス戦への準備は万全か

 ゼーフェルトでの代表合宿、気になっていることがあったので、山口蛍に質問してみた。「西野さんのサッカーは見えてきましたか?」と。彼の答は以下のとおりだった。
 
「やりたいというか、僕たちに求められていることはある程度理解はしてきている。そこまで選手に多く指示を出している感じはないですが、自分たちがやるべきことは分かってきている」
 
 このコメントからは、それなりにチーム作りが進んでいる現状が推察できる。そこまで焦りがないことは長友佑都の次の証言からも分かるだろう。
 
「まずフォーメーションの部分で次のスイス戦もどういう形で行くか、4バックなのか、3バックなのか、まだ分からないです。ただ、ピッチの中でいろいろ確認作業をしていてピッチ外でも選手間でコミュニケーションがすごく取れている。全然不安がないと言いますか。不安がないと言ったら嘘になりますけど、すごくチームの雰囲気もいい状態かなと思うんで、そこまで心配してないですけどね」
 
 照準はあくまでコロンビアとの初戦。「今できていたとしてもあまり意味がない」というのが原口元気の主張だ。
 
「3バックと4バックでは違う。次のスイス戦を4でやるとしたら、4のイメージを付けなきゃいけないし、練習やミーティングでどれだけ付けたとしても試合で必ず課題は出てくる。今できていたとしてもあまり意味がないなとは思う。もちろん準備していたものがパッと試合で出る時もありますし、出ない時もある。まあ、なるべく出るように、でも課題も出てもいいと思うので、準備しつつ試合でまた、そこから。今がベストじゃなくてもいいから、コロンビア戦ですべてを出せるように、それが大事」
 
 現時点で明確な形こそ見えてないものの、選手たちはそれなりにリラックスしているようだ。
 
「ピッチの外以外でストレスをかけすぎるのは良くないということで、やっぱりつねに頭がクリアな状態で、軽い状態で選手にはいてほしいということを今日も選手みんなに伝えていました」

押し込まれている時間帯にどう一息つくか

 その西野朗監督が就任当初からこだわりを持っているのがおそらくポゼッション。ただ、試合を通してボールを支配するというわけではなく、できる範囲でそういう時間帯を作りたいという狙いらしい。長友は西野監督の言う「ポゼッション」の意味をこう捉えている。
 
「正直ボールを自分たちが支配したいですけど、甘くないと思います。ワールドカップは相手のほうがクオリティもフィジカルも上。引いてブロックを作って守る時間はやっぱり増えると思う。ただ、それだけでは勝つことは難しいので、その中で西野さんはポゼッションの練習とかね、ボールを握るやり方とかをトライしています」
 
 
 押し込まれる展開が想定されるなかでのポゼッション。苦しい時間帯でも自分たちでひと呼吸つけるか、そうした方法論のヒントをスイスやパラグアイとの親善試合で掴めるか。原口は、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督がこだわった“縦への速さ”に加えて、ポゼッションも意識することが大事だという。
 
「縦一辺倒じゃなくて、自分たちの時間を作るという意味もあるし、それはすごくこの間の試合だけでもメリハリは良くなっていたと思うんで、それをさらにいつ行くの、行かないのというのは自分たちでタイミングを掴んでいかないといけない」
 
 果たして、6月8日のスイス戦でひとつの方向性は見えるのか。どのシステムを使うかはもちろん、ポゼッションの使いどころも見どころのひとつになる。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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