ただ、このシステムを採用すると本田圭佑のポジションがなくなる。実績と経験がある本田と香川を軸にしたいならば、4−2−3−1というシステムがある。
トップ下に香川、左MFが乾か原口、右MFが本田という布陣にすることは可能だ。

もちろんシステムは、対戦相手や試合の状況によって変動できるように準備をするものだ。メンバー構成も、最初は4バックで入っても、合宿でも試している3バックに変えるといった場面を想定して選ぶ必要もある。
それでも、通常はメンバーを見ればチームの”基本的な形”が浮かび上がってくるものだが、今回はそのイメージがなかなか掴めない。

そこに、西野監督の”迷い”が伝わってくる。招集メンバーを決める時点で、ある程度の選手は固めていると思うが、やはり海外組の何人かが、コンディションに問題を抱えていることが悩みの種になっていることは間違いない。

香川はケガから復帰したばかりで、岡崎は足首に不安があり、井手口、浅野はシーズンを通じて出場機会がなく、柴崎もプレー時間は長くはなかった。
実際に自分の目で確かめるまでは、攻撃的なポジションの選手を誰にするか決めかねているからこそ、いろんなスタイルに対応できる保険をかけ、ポリバレントな選手を優先して招集したのだろう。

本来ならこの時期は、試合にコンスタントに出ている選手、ケガ明けの選手、試合から遠ざかっている選手と、それぞれバラバラになっているコンディションを揃えるためのトレーニングに費やされるものだ。
しかし、21日に始まった合宿からガーナ戦まで、選手は競争を強いられることになる。誰もがW杯に出場したいのは当然であり、特に中盤の選手は、最終メンバーに残るために全力を尽くすだろう。

その場合、チーム全体の足並みを揃えづらくなることにつながりかねない。さらに、ガーナ戦にピークを持ってきてしまうことで、W杯を目前に調子を落としてしまう選手が出ることもあるだろう。
前回のブラジルW杯では、「コンディション調整に失敗したことが、試合終盤のガス欠を招いた」と言われているくらい、コンディション調整は結果を左右する。西野監督には、その点をふまえたマネジメントをしていってもらいたい。

W杯を目前にした難題に、どんな答えが出るのか。ガーナ戦での西野監督の采配から目が離せない。

津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro