決して高すぎるわけではない

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 一人の世界的プレーヤーとしては、33億円の年俸は決して高くはない。

 イニエスタは、バルサでも年俸800万ユーロ(約10億4千万円)を稼いでいた。彼のようなトップ選手がヨーロッパからアジアのマーケットに移籍することは、「下る」ことを意味する。

 楽天に先んじて交渉に入っていた中国の重慶当代は、約35億円+イニエスタが所有するワイナリーのワイン600万本=約46億円という破格の条件を出していた。イニエスタが現地に招待されていたこともあって、一度は「契約内定」とも報じられた。

 チェルシーから上海上港に移籍したブラジル代表オスカルは、年俸33億円+移籍金約90億円。メッシは年俸4000万ユーロ(約52億円)と言われる。世界トップレベルの選手の相場は、こんなものだ。

 なによりイニエスタの場合、契約満了のタイミングで、巨額の移籍金を払う必要がなかった。彼のようなトップ選手を、移籍金を支払って獲得する場合、必要な資金は100億円はくだらない。

 事実、バルサはブラジル代表コウチーニョを200億円以上支払って獲得しているし、パリ・サンジェルマンが、同じくブラジル代表ネイマールを500億円以上で売却する可能性も取りざたされている。

 34才になるイニエスタだが、今シーズンも衰えは感じさせず、チームに慰留されていた。「バルサと対戦するチームには移籍しない」という縛りを本人が設けていなかったら、競争はさらに激化していたはずだ。

 イニエスタが日本という地を選んでくれたことに、心から感謝すべきだろう。

 「韓国や中国にはあまり行きたくないよ。でも、日本はいいね!」

 欧州ビッグクラブのアジアツアーが流行っていた時期、バルサのある選手はそう洩らしていた。日本人の礼儀正しさ、真面目さ、イベントの進行の良さなど、「おもてなし」を気に入ってくれたようだった。

 国内クラブと対戦したときにも、グラウンドの管理が良く、スタジアムの雰囲気が友好的で、悪質なファウルをする選手が少なく、ボールプレーを好む点などに好印象を持ったという。

 日本に対するそうしたイメージが、あるいはイニエスタにも残っていたのかも知れない。