2017年6月
https://www.moriyamakenichi.com/2017/06/blog-post_9.html?m=1

ここは30年間登山をしてきて、20年間登山雑誌にかかわってきたプロとして断言しますが、いまのやり方で栗城さんが山頂に達することは99.999%ありません。
100%と言わないのは、明日エベレストが大崩壊を起こして標高が1000mになってしまうようなことも絶対ないとはいえないから言わないだけで、実質的には100%と同義です。
このことを栗城さんがわかっていないはずはない。
だから「嘘」だというのです。

栗城さんがやろうとしているルートは、こういうところなのです。
1シーズンに数百人が登るノーマルルートとは、まったく話が違うということをどうか理解してほしい。

栗城さんは世界の登山界的には無名の存在です。
本当にこれを無酸素単独で登ったとしたら、世界の登山界が「新しい怪物が現れた」と仰天し、世界中の山岳メディアが取材に殺到し、「登山界のアカデミー賞」といわれる「ピオレドール」の候補ともなるはずです。


そんなわけないだろ。


ということは、だれよりも栗城さん自身がわかっているはず。
本気で行けると考えているとしたら、判断能力に深刻な問題があると言わざるを得ない。
ところが、そんな違いは登山をやらない普通の人にはわからない。
そこにつけこんでチャレンジを装うのは悪質だと思うのです。

もうひとつ、嘘がいけない理由があります。
どちらかというと、こちらのほうが問題は大きい。
それは、栗城さん自身が追い込まれていくことです。
応援する人たちは「次回がんばれ」と言いますが、このまま栗城さんが北壁や西稜にトライを続けて、ルート核心部の8000m以上に本当に突っ込んでしまったら、99.999%死にます。
それでも応援できますか。

栗城さんは今のところ、そこには足を踏み入れない、ぎりぎりのラインで撤退するようにしていますが、今後はわからない。
最近の栗城さんの行動や発言を見ると、ややバランスを欠いてきているように感じます。
功を焦って無理をしてしまう可能性もあると思う。