金にものを言わせて米大リーグでフリーエージェント(FA)選手をかき集め「悪の帝国」とまで呼ばれた。そんなニューヨーク・ヤンキースに、ここ数年変化が起きている。先発ラインアップには昨季のア・リーグ本塁打王、アーロン・ジャッジら生え抜きの選手が並び、2年連続のプレーオフ進出に向け順調に勝ち星を重ねている。

 選手供給を支えるのは、ルーキーリーグから1A、2A、最高レベルの3Aまであるマイナー組織だ。躍進の陰には、ゼネラルマネジャー(GM)特別アドバイザーとして巡回コーチを務める松井秀喜氏の存在がある。

「いい意味で驚きの連続です」

 松井氏は巡回コーチ4年目となる今季、3Aスクラントンを中心に活動する。ニューヨーク市から北西に約200キロ。ペンシルベニア州の山間部にある町が、メジャー昇格を目前にした精鋭の集まる松井氏の職場だ。「若い選手というのはすごい。驚きの連続。去年からいい意味で驚きの連続です」と話す。

 昨季はアーロン・ジャッジが、新人の大リーグ記録となる52本塁打を放って新人王に選出された。正捕手となったゲーリー・サンチェスは33本塁打。8月末に昇格したグレグ・バードはプレーオフで3本塁打を記録して一躍注目を浴びた。いずれもヤンキース傘下のマイナーでプロの第一歩を踏み出し、育った選手だ。

 マイナーで3人を指導した松井氏は「ジャッジが“うまくいけばこのくらい”というところまでいったのなら、サンチェスは期待よりももっと上にいった感じ。予想以上だった」と振り返る。指導内容については「本人たちがどう受け取って料理しているかは分からないが、『これが一番いいと思うよ』ということは伝える」と多くを語らないが、ジャッジは軸足の使い方を指導されたことを共同通信の取材に明かし、「良い点も課題も教えてくれた。当時のアドバイスが今に生きている」と話している。

 今季の驚きは23歳の三塁手ミゲル・エンドゥハーだ。故障者リスト入りしたブランドン・ドゥルーリーに代わって先発出場を始めると、4月13日から7試合連続で長打を記録するなど、打撃開眼。4月の12二塁打はリーグ最多だった。松井氏は2Aトレントンで指導し始めた2016年当時を思い返すように「最初は長打なんて見たことがなかった。守備では確かに素晴らしいものを持っていたし、体に備わっているスピードや力は感じた。それがスイングに生かされるようになったのだろうと」と成長を喜ぶ。

 5月1日から8連勝した際のヤンキースの出場選手を見てみると、4試合で5人以上の生え抜き選手が先発メンバーに名を連ねている。好調の要因は育成の成功だと言ってもいい。

http://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/5/4/-/img_54e7c708f63299003a42244f29c05915344562.jpg
http://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/7/a/-/img_7a72e431519ad9567d1b67bdf0c8d9e7286607.jpg

続きは
文春オンライン 6時間前
http://bunshun.jp/articles/-/7415