第5回『そして、頂上へ』
高田馬場にある都立戸山高でアメフト部に入部した僕は、
仲間とともに優勝を目指し、奮闘していた。
決して広くはないグラウンドをサッカー部やラグビー部など
他の運動部とも共用するものだから、ひとたび野球部がノックを始めると、
硬球がミサイルのごとく飛んでくる。
防具をつけている選手たちと違い、
丸腰で危険にさらされる僕らマネージャーは、
びくびくしながら練習を見守ったものだ。

百キロ以上ある大柄な選手をそろえる私立校のチームと違って、
僕ら戸山高校は小粒ぞろい。そうした体格面でのハンディを埋めるためにも、
僕らは戦術面を重視した。
相手チームは右へ展開してくるのか、それとも左か。
パスを多用してくるチームなのか、それともラン攻撃なのか――。

パソコンを駆使し、
相手チームの攻撃傾向を分析するのが僕の仕事だった。
ときには徹夜での作業となることもあったが、
歯を食いしばって練習に励む仲間の姿を思い浮かべれば、
眠気などどこかへ吹き飛んでいった。

迎えた二年生の春季大会、僕らは快進撃を続け、
ついに都大会優勝という快挙を成し遂げた。
チームメイトとよろこびを分かち合ったあの瞬間はかけがえのない思い出だが、
僕が楕円形のボールを見つめ続けた青春から得たものは、決してそれだけではない。

体格に自信があれば、相手とぶつかり合うポジション。
細身でも判断力にすぐれ、肩が強ければ司令塔。
背が低くても足が速ければ、ボールを託される。
アメフトには個性に応じた様々なポジションがあった。
その後、「みんな違って、みんないい」というメッセージを発信していくことになる
僕の素地がつくられたのは、
このアメフトというスポーツを通じてのことだったように思う。