選手に悪質行為が指示された事例は、国内では2007(平成19)年10月、日本人同士の対決となった世界ボクシング評議会(WBC)フライ級のタイトルマッチで、当時の亀田大毅選手が、王者の内藤大助選手を抱え上げ、投げ飛ばす反則行為を行った。
父でトレーナーの史郎氏や兄の興毅氏が直前に「投げろ」などと指示していたことが確認され、世界戦で選手ら関係者が処分されるという事態に発展した。
海外では、アメフットの米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)で、10年に優勝した強豪セインツが09〜11年にかけ、守備コーチらの指示で相手を負傷させた選手にボーナスを支給していた事案が発覚。けがの程度に応じて1000〜1500ドルのボーナスを支払い、監督も黙認していたという。
一方、直接の指示がなくとも悪質行為が横行したケースもある。
12年9月に行われた野球のU−18(18歳以下)の国際大会で、米国の選手が本塁上のクロスプレーで日本の捕手に次々と激しいタックルを仕掛けた。捕手は顔面などをけがして試合後に病院に直行。タックル後、日本は守備で三塁に米国の選手がいる場合、内野ゴロでも捕手のことを気遣ってバックホームをしなくなり、次々と得点を重ねられた。
この試合が契機となり、翌年に国内でアマチュア野球の内規にラフプレーを禁止する項目が加えられた。
「選手や指導者は社会が必要としているものに敏感で、それにどう応えていくかを考えることが大切だ」と話すのは、米国でアメフットのコーチ歴があり、アスリート教育に詳しい追手門学院大客員教授の吉田良治氏だ。吉田氏は「勝つか負けるかだけになると、選手はイエスマンになってしまい、今回のようなことが起きる」と指摘。「問題を共有し、総合的な人材育成を継続して行う必要があり、その中で反暴力やスポーツマンシップの考え方が育まれることになるだろう」と指摘している。
2018.5.16 21:13
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