ハリルホジッチが貫いたフランス式の圧の強い接し方

 ハリルホジッチ前監督が指導者のキャリアを積んだフランスは、一般的に選手の自己主張が強い。オーダーを実行させるには押さえつけるぐらいの圧力が必要なので、選手に対して強く出る監督は少なくない。

 ところが、日本はフランスとは逆に圧をかけるまでもなく監督の意には従う。すでに同調圧力がかかっているからだ。例えば、試合中に監督の作戦を無視して自分が正しいと思うことを実行する時に、心理的なハードルは欧州より日本の方がはるかに高い。

 ハリルホジッチ前監督は、選手に対してフランス式の圧の強い接し方をしていた。そうなると、元々個人の意見を表明するのに同調圧力のある日本人選手は、ますます何も言えなくなる。欧州生活が長く、日本人としては自己主張の強い本田は、それを「服従」と捉えたのかもしれない。

 ただ、わざわざ「服従」という強い言葉をチョイスしたところに、本田も日本人なのだと感じた。監督の意向と少し違ったプレーをすることへの心理的なハードルの高さ、その裏返しが「服従」というあまり穏当でない言葉になったのではないか。

 コメントの冒頭で「悔いはないです」と言っているので、本田はW杯メンバーに選出されないことも予想していたのだろう。それでも、自分が正しいと思ったことにトライしないよりはマシで、やらないほうが「恥ずかしい」。しかし結果的にチームを好転させられなかったのだから選外も仕方なく、その点に「悔いはない」と言っているわけだ。

ラモス瑠偉とオフト監督の対立と妥協

 日本代表をハンス・オフト監督が率いていた時(1992〜93年)、ラモス瑠偉とサッカー観の対立があった。オフト監督は雑誌に批判的なコメントが載ったことでラモスを呼び出して話し合い、両者は歩み寄っている。選手を招集する立場のオフト監督に強く出られれば、ラモスは矛を収めるしかない。

 一方、オフト監督もラモスを不可欠な存在と考えていた。協調しなければ日本をW杯に連れて行けないことは、どちらも分かっていた。サッカー観の溝が埋まったわけではないが、その後は互いの妥協と黙認によってチームは進んでいる。

 ハリルホジッチ前監督と本田も協調できたと思う。しかしラモスのケースと違って、監督にとって本田はおそらくそこまで重要な選手ではなかった。レギュラーポジションが確約された存在ではなかった。とはいえ、影響力の大きなベテランには違いなく、あまりに意見が違うなら本田が外されても不思議ではない。

 本田は素晴らしい選手だが、彼のためにチームがあるわけではないからだ。各国のW杯メンバーから大物が落選するのは毎度のことで、ロマーリオ(ブラジル)もガスコイン(イングランド)もカントナ(フランス)も、三浦知良も中村俊輔(いずれも日本)も外れている。

 監督と選手の意見の衝突は、ある意味サッカーにはつきもので、ハリルホジッチ前監督と本田のケースはさほど深刻でもなかったと思う。W杯までに修復できたか決裂したのかは、もう分からないけれども……。

西部謙司 / Kenji Nishibe

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