捕手のキャッチングがきっかけ。

 日本の試合におけるマナーが世界的に問題視されるようになったきっかけは五輪だった。日本代表の捕手がキャッチングのたびにミットを動かし、この行為が審判への侮辱とみなされたのだ。

 審判は敵ではない。試合を円滑に進める中立的な立場なのに、その人間を欺こうとする行為が反感を買った。その影響から、日本の試合でのきわどいコースはすべてボールと判定されたとも言われている。

 あるいはシドニー五輪では、日本選手がヒットを打つたびにベース上でポーズをとった。これも相手チームへのリスペクトがないと問題視された。

ルールではなく“マナー”という問題。

 他にも例はある。2012年に韓国で行われたU-18の世界大会で、試合中にスタンドで配球を調べていたスタッフがボールボーイにメモを渡してベンチに届けたことが発覚した。

 規則に禁止とは書かれていないのだが、即刻注意された。

 4、5年前には、リトルリーグの世界大会で日本チームが優勝したが、塁上にいる走者が打者にサインを伝達していたことが発覚し、これも話題となった。

 直近では昨秋、カナダで行われたU-18W杯の3位決定戦で、日本代表が7-0とリードしている試合の終盤に盗塁を成功させた。これに相手の二塁手が激怒。事態を重く見た球審が警告試合を宣告した。

 日本の行為はどれも規則には抵触していないが、世界的には野球のマナーとして共有されているものばかりだ。

 日本は少年野球から、勝つための野球を叩き込まれている。

 そのため、どれだけの得点差があっても攻撃の手を緩めない。10点以上の差があっても、いつ試合がひっくり返されるか分からないからと、盗塁やバントを仕掛けて得点を積み重ねていく。

 そこに「対戦相手とともに楽しむ」という文化は薄い。
7点差での盗塁は是か非か。

 高校野球でも、その傾向が強い。

 今大会でも、大差の試合で送りバントや盗塁を仕掛けていく場面があった。筆者が高野連に「試合の進め方」について聞いたのは、今年日本で国際大会が開催されることが気になっていたからだ。

 センバツのある試合では、7点差の終盤に盗塁を決めたチームがあった。10点差でも同じことをするのかと監督に聞くと「うちは攻撃型のチームなので、次の1点、次の1点を取ることを心掛けている。サインを出す時もあるけど、相手にスキがあったら選手には積極的に狙えと話しています」と語っていた。

 もっとも、その監督の考えを否定しようという気はない。高校野球で勝利を求めるためには、自然な発想だろう。

 最近は金属バットの性能が向上したこともあり、セーフティリードというのがなかなか存在しない。得点は多ければ多いほどいいと考える状況なのも理解できる。

 ただ、国際大会の批判に対して日本の高校野球界がどう対応するかは、今後考える必要があるのではないだろうか。