吠えるやガッツポーズなどしてはいけない

田中将大は、2013年日本シリーズ第2戦、巨人打線を1点に抑えて完投勝利を
飾った。6回表、2死満塁でロペスと対戦、最後は直球で空振り三振に仕留めると、
直後にくるりと後ろを向いてこぶしを握り、何か叫びながら腕を大きく振って
のガッツポーズを見せた。

ロペスは「チャンスがあったらやり返そうと思っていた」と、第6戦での田中か
ら打った起死回生の同点弾を振り返ると同時に、「頭のいい投手だから米国の
ルーキーイヤーではやらないだろう」と、帰国時に皮肉たっぷりに言い残して
いる。

大リーグでも、マウンド上でガッツポーズを見せる投手がいないわけではない。
例えばテキサス・レンジャースのダルビッシュ有。三振を奪うとこぶしを固め
て吠える姿を、しばしば目にする。だが、「ルールを破った」として報復され
たという話は聞こえてこない。

北海道日本ハムファイターズ時代の映像を見ると、三振を取った後に打者に向
かって叫び声をあげたり、腕を大きく振ったりとアクションが大きい。ただ大
リーグに移ってからは自重するようになり、ガッツポーズも小さめに変えたという。

ニューヨーク・メッツやセントルイス・カージナルスに在籍したことのある
ジョー・マクユーイング選手が激しいスライディングを受けて骨折した時、
投手は迷わずスライディングした選手の次打席で死球をぶつけ即退場になった。
病院に向かう途中で死球のことを聞いたマクユーイング選手は、「スター選
手でもない自分のためにやってくれたのか」と目を潤ませていたとのこと。

実はマクユーイング選手はスターではなかったけれど、いつでも一生懸命で思
いやりがあり、チームメイトたちに愛されている存在であったこととも関係が
あったよう。

多くのスポーツでは選手やファンから非難を浴びるといった不名誉が「罰」とな
るが、野球はもっと直接的だ。

暗黙のルールがある理由はスポーツによって微妙に違うが、野球はチームや選
手のプライドのためと言われており、選手間の慣習を言い換えている場合もある。

アメリカ周辺の野球文化では、「大差で勝っているチームはバントはしない」
というのは不文律。
「セコ過ぎる」あるいは「死者に鞭打つ行為」ととられてしまうようだ。
メキシコのピッチャーが次打者に死球をぶつけるという、メジャーなどでは
伝統的な報復行為に至った。すでに殺気立っていた両チームは大乱闘を起こした。

アメリカのような銃社会で“挑発”は死を意味する

日本ではよく見られる得点差が開いている時の盗塁やバント、打った瞬間の
バットの放り投げ、ホームランが出た時のベンチ前の全員ポーズ、これら
は全てメジャーでは侮辱と見なされる。そこにはとくに理屈はない。
日本と違い、多民族が入り乱れてやってるため一種の戦争。
アメリカのような銃社会で“挑発”は死を意味する。