https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180415-00000001-wordleafs-fight&;p=2
こうなる危険な兆候はあった。
12キロ以上の減量があり、昨年5月のタイトル獲得時も体重が落ちずに直前に
パニック症候群に陥り、救急車を呼ぶ事態に発展していた。2月のV2戦も計量2
日前に脱水状態で「足がしびれる」という異常に見舞われた。野木トレーナーが、
毎晩、精神不安定となる比嘉が眠りにつくまで一緒に部屋にいて、その精神面を
フォロー。比嘉は自分自身に「この試合でフライ級は最後」と言い聞かせること
でギリギリで計量をクリアしてリングに上がっていた。22歳。その肉体は成長を
続けており、今回の予備検診では胸囲が97センチもあった。 もうフライ級は限
界だったのだ。

だが、具志堅会長は階級を上げることに聞く耳を持たなかった。
筆者は、前回の試合後、この階級問題を具志堅会長にぶつけたが、
「今日の動きを見れば、本人が食事の自己管理をすればやれる」とフライ級続行
を指令していた。
 米国での軽量級のビッグイベントである「スーパーフライ2」を視察に行くな
ど、転級は視野に入れていたが、連続KO記録の更新も目前にあり決断を見誤った。

 JBCの安河内事務局長は続出する体重超過問題の根源に「今だにひとつでも
下の階級でやれればパンチ力が生きるという減量神話が根強くある」と見て
いる。5月にバンタム級に上げて3階級制覇に挑戦する井上尚弥(大橋)が適
性階級に上げていく度に本来の実力を発揮できるようになるなど“減量神話”
から脱却すべき流れが日本のボクシング界にも出てきた中で、無理して厳しい
階級に留まらせた具志堅会長の責任も重い。

そして、もうひとつの問題は2月4日のV2戦から約2か月しかないという短期スパ
ンだった。前出の浜田代表は「2月の試合は1ラウンドで終わってダメージもな
かったし4、5キロは増えただろうが、逆に2か月しかないので、そんなに増やさ
なくて、いいので(短期スパンは)いいのかなと思っていた」と見ていた。
おそらく具志堅会長も同じ考えだったのだろう。だが、結果的に、それは裏目
に出た。

 減量も含めた過酷な準備は、試合が1ラウンドで終わろうが12ラウンドで終
わろうが変わらない。野木トレーナーは、減量の反動で“ドカ食い”をするこ
とを常に注意していたが、心身の“休養”というメリハリがないまま、過酷な
次の準備に入ったため、おそらく比嘉のメンタルも肉体も悲鳴を上げていたの
かもしれない。

 おまけにバラエティ番組への出演などの練習外の仕事も目についた。WBCは3
0日前、7日前の事前計量を定めており、それはクリアしていたが、“落とすに
落とせない”という危険信号が出ていたと聞く。
計量前に計った脈拍「84」、血圧「158/99」という数値も異常を訴えたものだった。

 具志堅会長は、「私たちの時代は年に4試合は当たり前だった」という考え方を
持つ。だが、ハングリーのない今の時代に過酷な減量負担のあるボクサーに対し
て昔のやり方は通用しない。