「ハリルホジッチ監督解任、西野朗氏が後任監督に」--このニュースに対する感想は、「驚きや怒り」より「がっかり、うんざり」の方が強かった。
近年、試合中継の視聴率低下など、サッカー日本代表に対する国民の関心は薄れてきているが、
その根底には、6回目の出場にもかかわらず、超一流とはいえない外国人監督を招聘してはトラブルを繰り返し、迷走を続けるサッカー協会へのあきらめがあるのではないだろうか。

◆ビジョンがない 

結局のところ、同じことの繰り返しではなかったのか。
ヴァイッド・ハリルホジッチの電撃解任を受けて、日本代表は西野朗新監督のもとでロシア・ワールドカップへ挑むことになった。4月12日には新監督が会見に臨み、新たなコーチングスタッフも発表された。

チームが発する危険信号を何度も見送りながら、W杯開幕が2ヵ月後に迫ったこの時期になぜ交代へ踏み切ったのか。監督の仕事を評価すべき技術委員長を後任に据えることが、組織の人事として正しいのか。
疑問はなおも山積するばかりだが、突き詰めば今回の騒動は、サッカー協会のビジョンのなさが招いたものではないだろうか。

2014年のブラジル・ワールドカップで惨敗を喫したことを受けて、日本サッカー協会はメキシコ人のハビエル・アギーレを招へいした。
前任者のアルベルト・ザッケローニは母国イタリアのビッグクラブを率いてきたが、代表監督を務めるのは日本が初めてだった。

短期決戦のワールドカップではクラブの実績が必ずしも意味を成さないとの判断から、メキシコ代表監督としてワールドカップで2度采配をふるい、いずれもグループリーグ突破の成績を残したアギーレに白羽の矢を立てたのだった。
現在のメキシコは長身選手を揃えるが、アギーレの監督当時は日本人選手に似た体格の選手が多かった。日本人選手の特徴を生かしたサッカーをしてくれるのではとの見通しも、このメキシコ人を監督に指名した理由だった。
ところが、代表監督就任から間もなく、アギーレにかつて仕事をしたスペインで八百長疑惑が持ち上がる。日本サッカー協会は2015年2月に契約を解除し、ハリルホジッチを急きょ後任に指名した。

◆西野監督は、アギーレの代役だったハリルホジッチの代役(photo by gettyimages)

なぜ、ハリルホジッチだったのか。ここでも選考基準となったのは、「ワールドカップで采配をふるったことがあり、かつ結果を残している」ことだった。
ブラジル・ワールドカップでアルジェリアの監督を務めた彼は、ベスト16入りを果たしていた。

2015年2月という中途半端なタイミングだっただけに、アギーレの後任の選択肢はそもそも多くなかった。
消去法とも言えるものだったが、ハリルホジッチがどんなサッカーをするのかは最優先事項ではなかった。

ブラジル・ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、ハリルホジッチ率いるアルジェリアは優勝したドイツ相手に延長戦までもつれ込む戦いを演じた。
弱者の戦略で強者を追い詰めた彼なら、日本でも同じようなことができるに違いないとの淡い期待が先行していた。

ザッケローニから振り返れば、イタリア人、メキシコ人、旧ユーゴスラビア出身と、監督の国籍はバラバラである。そのたびに、サッカーのスタイルも変わってきた。

このうえまた「ワールドカップで実績を残している」外国人監督を招くことになれば、代表の強化方針を疑われかねない。予算の無駄遣いとの批判も噴出し、要職に就く者の責任問題にも発展する。
日本サッカー協会は自ら示した代表監督の条件に縛られ、袋小路に陥っていったと言える。

>>2以降につづく

2018年4月14日 10時0分 現代ビジネス
http://news.livedoor.com/article/detail/14577619/