<当落線上の男たち>

 シリーズ最終回は、W杯(ワールドカップ)3大会連続出場が懸かるFW本田圭佑(31=パチューカ)。3月のベルギー遠征で半年ぶりに日本代表に復帰したが、ハリルホジッチ監督を納得させるプレーはできなかった。長く日本の象徴であった背番号4は今、何を思うのか。メキシコで聞いた。


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 メキシコの高地パチューカの空は抜けるように青かった。雲は大きく真っ白。気温は20度超。ここで暮らす本田の日焼けした顔つきは、半年ぶりに招集された日本代表、重い、曇り空のベルギーでもひときわ目を引いた。

 肝心の2試合。途中出場のマリ戦も、先発したウクライナ戦も勝てず、得点に絡めずと結果を残せなかった。ハリルホジッチ監督に、絶対に必要な存在だと認めさせることはできなかった。それは自覚している。

 「自分の中では、選ばれるに決まっているはずなわけが、選ばれない可能性がある状況になっている。その怖さは、もうコメントとして言わざるを得ない」

 ベルギー遠征中の3月21日に「選ばれるためだけのW杯なんて何の意味もない」と言い放った。そう言った通り、起用された2試合では、縦に速く、裏に抜けろとだけ言い続けるハリルサッカーを理解しつつ、何とかアクセントになってチームを動かそうとした。だが、結果は出なかった。

 そもそも、選ばれなければ目標にするW杯優勝、その前のW杯の勝利さえない。本田圭佑は“格好つけ”だが、あのコメントは格好よすぎやしないか。それが聞きたくて、パチューカを訪れた。何しに来たんだというあきれ顔で、苦笑いした後、こう言った。

 「やっぱ、ワールドカップには出たい」

 ハリルジャパンの最多得点者。岡崎、香川と並ぶ9得点を挙げている。当然、力になれる自負もあるし、付加価値をもたらすことができる存在だ。トランプをすれば強く、ディベートでも負けない。それはプレー同様、相手を読む駆け引き、裏を取ることが大好きで得意だから。「本田」と付く質問に過剰反応しつつ“嫌よ嫌よも好きのうち”のはずの指揮官をもう1度振り向かせることも、まだまだ可能なはずだ。

 「怖さ」と言ったのは、選ばれないことへの恐れや不安というより「コントロール不可の要素」だから。断を下すのが監督であること、選手は最大限アピールした上で、それを受け入れるしかないことも、もちろん理解している。

 サッカーも人生も全てが勝負。幼いころ、兄との1対1が日課だった。だから、メンバー入りも勝負と捉えた上で、冷静に言う。

 「今の段階で勝てる算段は半々」

 当落線上にいると自覚する。審判を待つ身だ。

 「可能性があるところまでは戦う。パチューカで何ができるかといったら、点、プレーオフに入る努力。そこよね」

 リーグ戦は残り4試合。13位から順位を上げ、8位以内に入ってプレーオフに進めば、ホームアンドアウェーのトーナメントで2試合ずつアピール機会が増えていく。決勝までなら計6試合。結果を出せば、メキシコから1万キロ近く離れたロシアへの道が少しずつ伸びていく。

 面白い、とでも言うように、本田のサングラスの奥の目は笑っていた。

【八反誠】(おわり)

4/7(土) 7:48配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180407-00172131-nksports-socc

写真
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