まさに、過去最高の長寿番組終了ラッシュです。

3月22日に「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系、放送30年、以下「みなさん」に略)、24日に「ランク王国」(TBS系、放送22年)、25日に「ウチくる?」(フジテレビ系、放送19年)、「ポンキッキーズ」(BSフジ、放送45年)が相次いで終了。
週をまたいで、「『ぷっ』すま」(テレビ朝日系、放送20年)、「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系、放送22年、以下「めちゃイケ」に略)、「新報道2001」(フジテレビ系、放送26年)が長い歴史に幕を閉じます。

一般的には「視聴率不振にあえぐフジテレビのテコ入れ策」という印象があるようですが、決してそれだけではありません。今回の長寿番組終了ラッシュは、テレビ業界全体における危機と希望、そして当事者たちの思いが込められているのです。

■「似た番組ばかり」進むバラエティの画一化

危機の象徴といえるのは、「終了する長寿番組のほとんどがバラエティである」こと。「みなさん」の最後で、とんねるずが「バラエティを滅ぼすなよ」と替え歌にしたように、バラエティが危機的な状況にあるのです。
「みなさん」「めちゃイケ」は、ゴールデンタイムに全国ネットで放送されている最後の“純お笑いバラエティ”といわれていました。2番組の終了は、民放各局が「週替わりの多彩な企画で笑いを追求する」というスタイルを手放すことでもあるのです。

一方、現在の番組表には、世界と旅、生活情報、クイズ、ニュースがテーマのバラエティがズラリ。各局が似たコンセプトの番組で競い合っていて、現在視聴率で独走状態の日本テレビも、それらの「絞られたテーマの中で勝っている」という現実があります。
実際、「みなさん」「めちゃイケ」に近い放送歴を持つ、「世界まる見え! テレビ特捜部」(日本テレビ系、放送27年)、「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」(日本テレビ系、放送21年)、「ザ! 鉄腕! DASH!!」(日本テレビ系、放送22年)が、
安定した視聴率を獲得していることからも、その様子がうかがえますし、「日本テレビが1990年代に立てたテーマと現在の状況がフィットしている」ともいえるでしょう。

しかし、私が各局のテレビマンに聞くかぎり、この現状は本意ではないようです。彼らは口をそろえるように、「純粋なお笑いバラエティをやりたいけど企画が通らない」「視聴率が取れないし、スポンサーもつかない」
「視聴率を求められるかぎり、コントやバカバカしい企画は復活しない」と嘆いていました。

なかでも大きいのは、視聴率の低下や、広告収入との費用対効果が悪化していること。近年テレビ業界は、「視聴率低下→予算削減→番組終了→新番組スタート→視聴率低下→予算削減→番組終了→新番組スタート」
という負のスパイラルを繰り返してきました。そんな中、フジテレビは最後の砦であるかのように、「みなさん」「めちゃイケ」の終了を踏みとどまってきましたが、ついに耐え切れなくなったことで、さらなるバラエティの画一化が進んでしまうのです。

■冠番組を持つ大物MCが希望の光に

事実、「みなさん」の後番組は「直撃! シンソウ坂上」、「めちゃイケ」の後番組は「世界! 極タウンに住んでみる」が発表されました。純お笑いバラエティではなく、ニュースと世界がテーマであり、他局と似た番組だったのです。
ちなみに、昨年スタートしたバラエティで最も話題を集めた『陸海空 地球征服するなんて』(テレビ朝日系)のテーマも世界。
“ナスD”の破天荒な活躍で盛り上がりましたが、けっきょく似たテーマの番組が多いためか、現在は他番組の中にまぎれた状態となっています。

視聴率と予算に加え、コンプライアンスやクレーム対策などの問題もあるだけに、各局のバラエティが「いかに狭い場所での戦いを強いられているか」は明白。
もはや、どんなに長い歴史を持ち、局の発展に貢献し、根強いファン層を持つ長寿番組でも、守ってもらえない時代になったのです。

春以降も放送される長寿番組には、「徹子の部屋」(テレビ朝日系、放送42年)、「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系、放送35年)、「所さんの目がテン!」(日本テレビ系、放送28年)、
「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ系、放送28年)、「ダウンタウンDX」(日本テレビ系、放送24年)、「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系、放送24年)、
「踊る! さんま御殿!!」(日本テレビ系、放送20年)などの大物MCによる冠番組が多数を占めます。

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