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CHEMISTRY 最期の川 大杉漣 勝久 こくじん こくの味噌 有料 たわけ タクシー 正義
281 俺より強い名無しに会いにいく sage 2018/02/11(日) 20:18:51.93 0
 男は友と並んで、浅草の町を歩いていた。
モヒカンに剃り上げた頭にサングラス、羽織っているM65は所々が血で汚れていたが、それは間違い無くかつての友であった。
思いも寄らなかった再会に、二人の会話は弾んだ。

「それにしても、まさかお前が生きているとはな。俺は名古屋に向かっていたんだが、もしかしてと思って浅草に寄ったんだ。それで正解だったよ」
「力丸に知らせたらさっきの俺達みたいに驚くだろうね〜。それにしてもなんで名古屋に?そこになにかあるわけ?」
「名古屋には、今でも都市機能が残っている。日本最後の都市だよ」
「まーーーーーーーじか!」
「今でも、夜に明かりが絶えることなく、万博のように人が活気づいている。別名・夜万博と呼ばれているらしい」

 そこまで話すと、友は立ち止まり、晋剣な表情で男に語りかけた。

「お前も来ないか?いや、来てくれ。いきなりで悪いが、それでもここで暮らし続けるよりいいだろ?」
「そうなんだよね・・・・・・でもさぁ〜」首を横に振りながら、男は答える「俺にはこの町の皆がいるんだよね」

 友は「何をいっとるんじゃ! たわけ! どこをどう見ても無人の廃墟じゃ!」と怒鳴ろうとしたが、それよりも早く、男はポケットからリモコンを取り出し、スイッチを入れた。
するとその信号は、男が設置したのであろう町中のケーブルに伝わり、ケーブルに繋がれたスピーカーから人々の声が流れ出した。
商店街は浅草に暮らす人々の声で満たされ、浅草神社に近づけば観光客の声が、ゲームセンターの前を通れば格ゲーマー達の歓声が聞こえた。

「いやー驚いたね」

 一瞬にして生を取り戻した浅草を前にして、友は唖然としながら呟いた。

 夜中三時半。ビルに到着した二人の会話は止むことなく、晋也にまで及んだ。
友は、男が寿司と焼き肉だと言うアナゴと肉の缶詰をつまみながら、時折ふと暗い表情を浮かべながらも、男の問いかけには笑顔で応えていた。

「そろそろかな〜」男はそういって立ち上がると、隣の部屋に向かいながら話す「今日は王国復活といかない?」
「復活?」
「最近はまた配信してるんだよね。けっこう見てくれる人がいてさぁ」

 そういって男が持ってきたのは、壊れたノートパソコンだった。
男は電源ボタンを押すと、真っ暗な画面に流れるコメントに向かって返事をしていく。
その姿を見ても、友はもう「いやー驚いたね」とは言わず、男と一緒に一夜限りの王国復活配信を楽しんだ。