しかし問題なのは、その得点力だ。今季、所属のケルンで挙げたゴールは、出場した1414分に対し、わずか2(3月11日現在)。
この数字はいくら何でも少なすぎる。持ち味を発揮するならFWとしてではなく、4−2−3−1の1トップ下(「3」の真ん中)のほうが、いいのではないかという気にさえなる。

得点力を考えると、昨季のJリーグで得点王争いを演じた国内組に目が移る。
23ゴールを挙げて得点王に輝いた小林悠は、ウイング(サイドアタッカー)編でも触れたとおり、所属の川崎フロンターレでは今季、4−2−3−1の「3」の右でプレーする。1トップでも、ウイングでも、どちらも可能という点でポイントは高くなる。

得点ランキング2位(22点)の杉本健勇(セレッソ大阪)は、他の選手にはない高さ(身長187cm)がある。存在がわかりやすいので、ターゲットになり得る。ポストプレーもまずまずだ。
急にブレイクした選手は翌シーズン、落ち込むことがよくあるが、杉本は今季も高いレベルを維持している様子。ハリルホジッチが4−3−3を継続していくならば、大迫を脅かす一番手になりそうだ。

得点ランキング3位(20点)の興梠慎三(浦和レッズ)、5位(12点)の金崎夢生(鹿島アントラーズ)は厳しいだろう。主流となる4−3−3の1トップとの相性がいいとは言えないからだ。
興梠の場合は、今季の浦和でのプレーに表れている。堀孝史監督が採用する布陣は、ハリルホジッチと同じ4−3−3。その1トップに興梠はうまくハマっていないのだ。

相手DFを背にしながらプレーするタイプではない。身長も175cmとけっして高くはない。ターゲットにはなりにくい。2人の”シャドー”が近い距離で構えていたペトロヴィッチ時代の3−4−2−1のほうが、興梠には断然、マッチしていた。
金崎も所属チームのサッカーと関係する。鹿島の基本布陣は中盤フラット型4−4−2。金崎はその2トップの一角としてプレーするが、2人のうちの1人なので、サイドに流れたり、開いたりする。真ん中に張るプレーを、もう1人のFWに任せようとする傾向がある

ここが、ハリルホジッチのニーズと合致しない点だ。彼が1トップに求めていることは、サイドに開かずに真ん中にいること、だ。
そうした意味では、得点ランキング4位(14得点)の川又堅碁(ジュビロ磐田)のほうが適している。追加招集という形で招集された昨年末の東アジアE-1選手権では、3試合すべて交代出場ながら、1トップにふさわしいプレーを見せた。

わかりやすかったのは、先発した金崎と交代で入った第1戦。収まりがよかったのはどちらかと言えば、川又だった。
とはいえ、金崎、興梠の肩を持つわけではないが、ハリルジャパンにはオプションの中に2トップの戦い方がないことに疑問を感じる。2トップの一角ならば、両者に加え、岡崎、さらには武藤嘉紀(マインツ)も浮上する。

3FWの1トップ型であっても、相手リードで迎えた終盤は、4FWの2トップ型に変えて臨まなければならないシーンも出てくるはずなのだが……。
限られた枠の中で、いかに多くの選択肢を持たせるか。その数と監督の優秀度は比例の関係にある。

また、このポジションには毎度、サプライズ選出が発生する。2006年大会の巻誠一郎、2010年大会の矢野貴章は、本大会ではウイングで起用された。2014年大会の大久保嘉人は1トップで堂々スタメンを飾った。
最終選考の段階で、調子がいい選手、当たっている選手が滑り込んでも、なんら不思議はない。その指標となる今季のJリーグの得点ランキングには、W杯のメンバー発表まで目を凝(こ)らして注目したいものだ。

杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

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