大相撲春場所の初日を2日後に控えた3月9日、貴乃花親方は昨年11月に発覚した関取・貴ノ岩への暴行事件について、日本相撲協会の対応が「重大な疑義を生じさせるもの」だったとして内閣府に告発状を提出した。角界関係者を驚かせた告発の背景には、一門内での“孤立化”もあったようだ。

 日本相撲協会の2月の理事選で、貴乃花一門の親方衆は阿武松(おうのまつ)親方(元関脇・益荒雄)に投票し、貴乃花親方は「2票」で落選。

 場所前の3月3日には、大阪駅前のホテルで恒例の「貴乃花一門激励会」が開かれていた。2015年以降は毎年恒例の会で、今年で4回目。だが今回、一門の親方衆は1人も顔を出さなかった。

「激励会の冒頭で司会者から、『貴乃花一門会としてお集まりいただきましたが、急遽、貴乃花部屋激励会とさせていただきます』と説明があっただけ。親方本人からの説明は何もなく、看板にある会の名称だけは『第四幕 貴乃花激励会』に変わっていた。おかみの景子さんも心なしか厳しい表情でした」(出席者)

◆誰も信用しない

 出席者に戸惑いが広がる中、激励会の席で貴乃花親方はカラオケを熱唱した。

「曲はアリスの『遠くで汽笛を聞きながら』だった。“悩み続けた日々を忘れてしまいたい”という意味合いの歌詞だから、つい選曲の意図を深読みしてしまった」(同前)

 貴乃花親方の心中には、どのような思いが去来しているのか。別の出席者はこう証言する。

「激励会の歓談中、ある後援者に貴乃花親方は『協会には99人の敵がいる』と説明していた。“理事選で自分に入った2票以外は敵”という意味なのでしょう」

 場所前の恒例である一門の連合稽古さえ行なわれず、一門が空中分解したように見える状況について、後援会関係者の一人はこう話す。

「八角理事長ら執行部派はこれを好機と見て、春場所後の貴乃花一門解体、一門再編を目指しているはずです。ただ、一門の親方衆がいきなり貴乃花一門から離脱するような動きは今のところありません。浅香山親方(元大関・魁皇)や玉ノ井親方(元大関・栃東)ら、一門外の貴シンパは今も貴乃花親方支援に動こうとしているようで、部屋の運営が立ちゆかなくなることはないでしょう。

 むしろあり得るのは貴乃花親方自らが一門を離脱する可能性です。『99人の敵』という言葉が出るくらいですから、貴乃花親方は誰も信用せず、たった一人で協会改革を唱えていくつもりではないか」

 激励会の5日前に開かれたタニマチを集めたパーティで貴乃花親方は「俺はこれから何でもできます」と語り、理事から外れた“自由な立場”であることを強調した。

 追い詰められたかに見える貴乃花親方は手段を選ばず「何でもやる」つもりのようだ。告発状提出が、「99人の敵」に対する“反撃の狼煙”となるのか。

※週刊ポスト2018年3月23・30日号

3/13(火) 7:00配信
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