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■“異色”はオンリーワンを貫いた結果、しかし諸刃の剣でもある

 “異色”の際たる例が2016年度の『R-1ぐらんぷり』王者・アキラ100%ではないか。オンエア時のキャチコピーは「見えたらごめんなさい!」であり、「絶対見せないdeSHOW」と題してさまざまなアプローチでお盆で股間を隠すという芸を披露。見えそうで見えないハラハラ感をあおり、ネタ中は悲鳴のような歓声があがった。だが、この裸芸がさまざまな物議を醸した。噺家の桂歌丸は「言っちゃ失礼ですけど、裸でお盆持って出てきて何が芸なんですか。私は違うと思うな。ああいうのを見て、面白いな、うまいなと思われちゃ困る。日本の言葉を使って笑いを取るのが芸人。『笑われている』ことになんで気が付かないんだろう」とアキラ100%を痛烈に批判。SNS上でもこれはお笑いなのか、といった意見も散見され、また、放送倫理・番組向上機構(BPO)が公式サイトで公開している「視聴者からの意見」でも青少年に悪影響があると苦情が寄せられたことも報じられた。

 ネットではYouTubeや多くのメディア、時にはTV番組でもでアキラ100%のネタをスロー再生し、本当に見えていないのかを検証するといったことも数多く見受けられるが、いまだ「見えた」という事実はない。何をもって“お笑い”とするかは難しいところだが、アキラ100%の裸芸は、は少なくとも“技術”としては芸といえるだろう。事実、多くのR-1王者がその後も継続的に活躍する例が少ない中、優勝から1年経った今も芸能イベントで引っ張りだこであることからも需要はあるようだ。

 さまざまなピン芸の形があるが、古典的な「漫談」「モノマネ」「1人コント」フリップなどを用いた「小道具芸」…やりつくされた中で自分だけのお笑いスタイルを突き抜けた結果、“異色”と称されることもあるのだ。

■体を張ったピン芸は決して“異色”ではない! 如何に“独自フォーマット”を構築するかで明暗

 一方、お茶の間人気を獲得したピン芸人の例を見てみよう。活躍目覚ましいピン芸人の代表格として、ケンドーコバヤシ、バカリズム、劇団ひとり、陣内智則らが挙げられる。

 ケンド―コバヤシは、博識を武器に『アメトーーク!』(テレビ朝日系)などトーク番組で存在感を発揮。知らない人にもニッチなジャンルを面白おかしく紹介する“プレゼン企画”では外せない芸人となった。バカリズムは『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)で過去最多優勝タイ(ネプチューン堀内健と並ぶ3回)を果たしており、画力を生かしたフリップ芸や大喜利の実力者として知られている。陣内智則はBGMと音楽を駆使した“1人コント”を武器にネタ番組には欠かせない存在になり、今回の『R-1ぐらんぷり2018』の審査員も務める。劇団ひとりは芸名にも表れている通り、様々なキャラクターを演じ分ける一人芝居風の“憑依型”の笑いを披露し、その演技力は芝居のフィールドでも引っ張りだこだ。

 また、ベテラン芸人を例にとっても、出川哲朗や江頭2:50の強烈なリアクション芸は、現在のバラエティになくてはならない貴重な芸であることは周知の事実。つまり、体を張ったリアクション芸は決して異色でも色ものでもなく、ピン芸人にとっては、ある意味“正統派な芸”なのだ。そこにどのような自己流のスパイスを加え、視聴者に飽きられること無く、よりソリッドに芸を構築していくかで明暗が分かれる。

 先述のアキラ100%や彼ら売れっ子ピン芸人のように、自分だけの“お笑いフォーマット”を見つけられる稀有な才能でないと継続的な活躍は難しいのかもしれない。今年の『R-1ぐらんぷり』でも、傑出した力を携えたピン芸人による、新たなお笑いフォーマットの提示に期待したい。

おわり