大橋巨泉

「その日本ティームにはオメデトウと言いたいが、
ひとつだけ声を大にして言っておきたいことがある。
 ESPNの中継、NHK(海外放送)のニュース、更に帰国後のインタビューみんな見た。
喜びの言葉、選手を讃える声、イチローに至っては「神が降りてきた」とまで自賛したが、
王者(ディフィイング・チャンピオン)として敗者(韓国)をいたわる言葉がひとつも
聞かれなかったのはどうしたことか。

 勿論、マウンド上に韓国旗を立てるなど大人げない行動もあり、伝統的な
近親憎悪的感情は理解できない訳ではない。
しかしそれでも王者たるもの、相手の健闘を讃える気持ちが欲しいのだ。
 あの劣る戦力で、気力をふりしぼって九回同点に追いついた事だけでもその価値はある。
 第一君達は「侍ジャパン」と名乗っていた筈だ。
 ベストセラーになった藤原正彦さんの「国家の品格」を読むといい。
 武士道とは「惻隠の情」(相手を思いやる気持ち)である。
 王貞治が監督だったら、果たして何と言ったか。」

週刊現代平成二十一年四月十八日号