>>241
里崎の著書「非常識のすすめ」より
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トレードで阪神に移籍、現在、横浜でエース格の活躍をしている久保康友も変わったピッチャーだった。あれは、阪神との交流戦での出来事だった。
バッターは金本知憲さんだった。僕の出したサインはフォーク。落ちるボールだ。金本さんは左打者だから僕はアウトコースに構えた。
するとどうだ。明らかにボールは膝元から曲がっていく。フォークではなくスライダーだった。
次の瞬間、ガポーンという快音と共にホームランを打たれたのである。
マウンドに走って久保を叱った。やってはならないサインミス。
まだフォークで打たれたなら納得もいくが、危険だと察知して避けたはずのボールで打たれたのだから、当然、腹が立った。

「おい!フォークのサイン出したろ?何をサイン間違いしてるんや」
するとしれっとした顔で「いえ、フォークを投げましたよ」と言うのだ。

「はあ?ウソつけ!なんでフォークが、こうやって曲がっていくんや」
それでも、「投げました」と譲らない。僕も意地になって、試合が終わると、すぐさまビデオルームに行ってスロー再生でチェックした。
ボールの握りを見ると、フォークのように挟んではおらず、間違いなくスライダーの握りだ。明らかに久保のサインミス。
久保を、そのビデオルームに呼び出した。

「ビデオを見てみろよ。こうやってスライダーの握りをしてるやないか。これの、どこがフォークやねん」
すると久保も負けていなかった。真顔で「僕は、フォークをこういう握りからでも投げるんですよ」と言う。