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続きです。

■痛みとの戦い、頭を洗うこともできなかった

−昨年4月、1軍先発直前に右肩痛が再発

松坂 気持ちの浮き沈みがかなり激しかった。現役を続けようか、あきらめようかと。毎日気持ちが違いました。グラウンドにも行きたくないとか…。ひどい時はシャワー浴びていても痛い。頭を洗うこともできなかった。何とか持ちこたえるようにしていた。最後は、自分が自分自身を信じられなくなったら、そこで終わりと思っていた。本当はそう思ってないけど、そう思うようにするというか。自分に自信を持つというか。信じることに対して、強い気持ちじゃなく、いつ折れてもおかしくない、気持ちの弱さというか。ギリギリのところでしたね。

−長いキャリアでそんな経験は初めてでは

松坂 そういうのを人に見せたくないので。同情もされたくないし、無理して笑っていた。誰というわけではなく、自分より苦しんでいる人間はいる。自分よりずっと若くて、入団したときからケガで、僕よりよくなる可能性があるのに、やめなきゃいけない選手も見てきた。でも自分にはまだ投げさせてもらえるチャンスがある。あきらめさえしなければ。いつか喜びに変えられる苦しさだと自分に思い込ませていました。

−今、投げている球に納得はいっているのか

松坂 僕は、直球に関してはつねに、捕手の後ろに球が突き抜けていくイメージをしている。7割くらいの力で投げた7日はそれが何球かありました。あと何回かで10の力で腕を振っても大丈夫なときが来ると思う。全然、早くなくてもいい。オープン戦に入ってからでもいい。今はとにかくリラックスして投げるのが一番ですかね。

−このオフは多くの「松坂世代」が岐路に立った。所属先が決まらない人もいる。トップランナーとして、自分はどうありたいか

松坂 ボロボロまでやり続けるっていうのはずっと思っている。米国の選手ではその年にタイトル取ったけどやめちゃうとか結構いるんですよ。オルティスもそうです(レッドソックスの同僚。38本塁打した16年に引退)。ヤンキースにいたムシーナなんて(08年に)20勝してやめましたから。かっこいいなとは思います。向こうの人は家族を大事にしますよね。でも、僕は子どもたちにまともに投げている姿を見せていない。もう1度見せたいです。

−18歳は甲子園連覇、28歳はキャリア最多の18勝。38歳はどうなるか

松坂 あまり意識したことはなかったけど、いい周期ですよね。10年に1回じゃ長すぎるけど(苦笑い)。ポジティブに、プラス思考で生きていきますよ。全部プラスでいきます。

−松坂世代と呼ばれることについて

松坂 この間も子どもを連れたお父さんに「自己紹介の時に『松坂世代の〜です』と言っています」と言われました。昔は嫌というか、申し訳ない思いだった。最近はうれしい。ありがたいです。できるだけ長く、それを使ってもらえるようにしたい。期待してくれる人がいる以上、応えたいと思う。この3年間、何もできなかった。ホークスは復帰できるようにサポートしてくれた。結果を出すのが一番だろうし、違う形で返さないといけないと思っています。まず、中日のために頑張りたいと思っています。(聞き手=柏原誠、山内崇章)