http://number.bunshun.jp/articles/-/828370
下町ボブスレー、五輪挑戦の6年間。町工場の親父が捧げた匠の技と誇り。

「ライバルは、フェラーリにBMW」

 モノづくり世界No.1の力をアピールする場は、オリンピック。

「今、目指すのは五輪出場だけではない。私たちはメダルが獲れる!」

 チームが見据える目標は、さらに上へと向かっている。

仕事がさらに激減した町工場の親父たちは、寄り集まって打開策を見出そうと必
死にもがいた。
 そのタイミングで大田区の職員が「こういう時こそ地元の連携が大事。
みなさんでボブスレーのソリでも作って、町おこししませんか?」と、
持ち掛けて来たのだ。 町工場の技術力を生かすのに、ソリは何よりも最適だった。
ボブスレーのソリは金属加工技術を生かせるし、複数の工場でタッグを組むこと
になるからだ。

日本代表からの不採用を告げられてもあきらめずに。

 プロジェクトチームはその後、連盟の要望通りに改良したソリを作り上げた
が、2年後の11月、改めて平昌五輪での不採用となった。

 この知らせに細貝は「目の前が真っ暗になった」というが、あきらめるわけ
にはいかなかった。

「『町工場はカッコイイ』と思ってもらえれば」

 日本国内におけるボブスレーの環境は厳しい。下町ボブスレーのテスト走行
が行われていた長野市ボブスレー・リュージュパークの休止が、今年4月に発
表された。札幌市の手稲山ボブスレーコースが2000年に廃止されて以来、唯
一のコースだった。最新マシンのテストも今後は海外まで足を伸ばさなけれ
ばならない。

 それでも彼らには大きな夢がある。

 細貝は“下町ボブスレー”の大きな目的の一つをこのように明かす。

「子供たちに『町工場はカッコイイ』と思ってもらえれば、本当に嬉しいです」

この地域の技術力を広く世間に知らしめたい。
「一番のPRってなんだろう」

「オリンピックで使われる道具をみんなで作ったら、これは最大の成果になる」

「オリンピックで使われる何かを作って、子どもたちに『あれは俺が作った
ものだ』と、言いたい」

「フェラーリだって、BMWだって自社で検証コースを持つなど、最高の環境で
作り上げてきますが、私たちも決して負けません。“ものづくりのよろずや”
なのです。」

このプロジェクトが成功すれば、将来的には世界から航空宇宙関連、医療関連機
器の幅広い受注にも繋がっていく。

プロジェクトチームは夢を追うだけでない。

 この国の匠の力を、世界に知らしめる重責も担っている。