強者ルンビと、俊敏なアルトハウスが優勝争いの先頭に進み出ている。また、今だになりを潜めるソチ五輪金メダリストのフォクト(ドイツ)、抜群にチームワークの良い5人のスロベニア勢、強気なアバクモワを筆頭に、長身の若手選手を揃えるロシア勢も台頭している。
 
 正直、高梨の世界での現在の位置関係は、3位から5位あたりだろう。

 4年前のソチ五輪では金メダルの最有力候補と期待されたが4位に終わった。マネージメントを含め高梨沙羅をケアする『チーム高梨』が結成され、しっかりとしたサポート体制が作られていた。ただ、スタート前に五輪特有の極度な緊張にさらされ、踏み切りで一瞬、固くなってしまった。それこそ強いメンタルの保持がままならなかった。

「ソチのようなことは二度と体験したくないです。だから今回は前向きに飛びます」
 
 その経験とメンタルが一発勝負の本番で結果を残すカギとなる。

 五輪は明らかにW杯と違う特別な舞台である。W杯で勝ち続けている強力なライバル達も五輪の異様な雰囲気の中で、これまでと同じようなメンタルを維持できない可能性もある。また風などのコンディションも影響する。“魔物”が棲むのが五輪であれば、それを一度、味わった高梨にはアドバンテージがある。

 高梨には、いま一度、生まれ故郷の北海道上川町の原風景を思い出してみてほしい。少ない人数のジャンプチームながら地元のシャンツェで切磋琢磨していたときのことを。ひたむきに飛んで、楽しくてしょうがなかった自分がそこにあっただろう。 
 注目の女子ジャンプは2月12日に行われる。

 (文責・岩瀬孝文/国際スキージャーナリスト)