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続きです。

 貴乃花一門の基礎票は11票でもう一人の候補者の阿武松親方が8票、貴乃花親方が2票なので、1〜2人の親方が”造反”したとみられている。

「票が少なすぎる。貴乃花親方の2票の内訳は自身と長男の優一氏と娘が結婚した高砂一門の陣幕親方だろう。2票が他一門に流れたと思われるが、その親方が亡くなった北の湖親方に恩があるので、北の湖部屋を継承した山響親方(元幕内・巌雄)に入れると、投票日前日に貴乃花親方に了承を得たらしい」(貴乃花一門関係者)

熱心な"ス−ジョ"の40代女性はこう分析する。

「貴乃花は落ちたけど、他の一門のように政治的な根回しをせず、2票というのはかえって清々しさがあった。101人の親方の中には、45歳の貴乃花より若い親方が30人くらい増えており、現役の横綱時代の迫力を知らないので、一門を超えての支援には結びつかなかったのでは?」

 元NHKアナウンサーの杉山邦博氏はこう見る。
「貴乃花親方は元横綱日馬富士の傷害事件で、組織への協力姿勢が問われ、理事解任処分にされていた。それにもかかわらず、2カ月ほどで理事に復帰するのはふさわしくないという判断を多くの親方が下したのでしょう」

 貴乃花は2010年から4期連続で理事を務めてきた。相撲協会の教習所長、巡業部長、審判部長などの役職を務めたが、「就任中にいったい何を改革したのか。会議でもいつもダンマリなので何もないのではないか」という意見も協会内外から挙がっていた。

「これから貴乃花一門は阿武松さんを中心にまとまっていくでしょう。阿武松さんは現役時代からはっきり発言をし、しっかりとした意志をもった人です。貴乃花親方はだんだん孤立化が深まるのではないか」(杉本氏)

一方、全員当選を果たした八角執行部はこれから反撃だと、息まいている。
「当選した執行部の理事は『貴乃花はマスコミを使って今の執行部が悪の権化のように散々、報じさせた。今度はこっちがやり返す』と言っていた。貴乃花一門も混乱し、『これからまとまっていけるかな…』と心配する親方もいる。錣山親方(元関脇の寺尾)も無所属のままでしょう。貴乃花親方の人気でうまく、浮動票をとって副理事になれる目算で一門を飛び出したのに、当てが外れて落選。あちこちの一門が、勢力を伸ばそうと貴乃花一門に手を突っ込むはず。八角理事長はあと2年で終わりでしょう。次の理事長を狙う、春日野親方(元関脇・栃乃和歌)や尾車親方(元大関・琴風)あたりは数を増やしたい。尾車親方は、二所ノ関一門で貴乃花親方とも元は同門。尾車親方に近い親方は『過去は過去。水に流して戻ればいいじゃないか』と話しています」

 3月には理事長選が控え、八角理事長の再選は確実とされ、高砂一門の関係者はこう自画自賛する。

「八角さんは人望がある。やはり人気がないと何もできないな」

 今後、貴乃花親方の巻き返しはなるのか。
「貴乃花は現役時代は最高の横綱だった。それに対するイメージや畏敬の念は持っていた。だんだん、親方たちは時がたつにつれて距離をおくような見方に変わっていった。貴乃花親方が今回の結果を謙虚に受け止めて、自分の思いをブログや文書ではなく、みずからの生の声で発言すべきだと思う」(杉山氏)

角界から当分は目が離せない。(本誌 上田耕司)
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