■あの人いま 元テニス世界ランキング4位 錦織圭さん(31歳)

2020年、USオープン決勝。 それを、TVで見つめる男がいた。
14歳で将来を嘱望されアメリカにテニス留学した、錦織さんは今……

「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する錦織は、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。USオープン決勝で、俺がチリッチにストレート勝ちする夢を」

アカデミーを卒業後、プロになるも、GS優勝は叶わず、MSすら獲得できずに終わった。
故障がちになり、 ランキングも急降下し、
若手選手の台頭に押され目立った活躍はできず30歳の若さで引退を決意。
今はのどぐろ料理店を営む傍ら、地元のテニススクールのコーチを勤めている。

●暖簾の屋号の文字は元全仏王者、チャンコーチの手によるものだ
「いらっしゃい」。松江線上松江駅東口から歩いて30分。
「のどぐろ料理 錦織」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると、白いタオルを頭に巻いた錦織さんと妻、あこさんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『錦織』という文字はチャンコーチに左手で 書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった
おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」

●とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「のどぐろ好きは飛行機に乗って本場・島根県まで食べ歩きに出かける時代でしょ。
ボクが修業した島根の老舗『のどぐろの松岡』の鍋は白味噌がベースなのが特徴だから、
醤油ベースがのどぐろの鍋だと信じ込んでる人にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけど、それも修業のうち。我慢、我慢です」

●かつてのライバルで現世界1位のラオニッチや、ウィンブルドンを連覇したチリッチついて尋ねると……
「あいつら俺より下手だったんですけどね(笑) 」と、おどけ 「体格に恵まれるのも才能だと思いました」
「怪我さえ無ければって…歯がゆいですけど。」 「今はもう現役に未練はありません。今度は、教え子でGSを狙いますよ(笑)」

(写真)のどぐろを手に持つ錦織さん