公衆は退屈しのぎに一匹の犬を飼っておく。この犬は文学界の卑劣漢である。
いま誰かちょっとした人物が現われるとする、傑出した人間ならおそらくもっとお誂え向きだろう。
するとその犬がけしかけられて、退屈しのぎが始まる。この犬は人にかみつく癖があるので、その人の上衣のすそをひっ裂き、無礼ないたずらのかぎりをつくす―
ついには公衆のほうが飽きてしまって、“もうたくさんだ”と叫び出す。これで公衆は水平化をなしおえたことになる。