◆膨らんだ借金は132万円
 
源氏名は緒方孝市の妻から取り、“かな子”だった。

ホステスは政治・宗教、そして野球の話はご法度。かな子も潔くカープ愛をひた隠した。巨人ファンの客に愛想を振り撒き、DeNAファンの客と同伴出勤し、中日ファンの客とアフターし、
ヤクルトファンの客にボトルをいれさせた。そんな秘密のアルバイトを阪神ファンの旦那には隠し続けた。

「一度、中日ファンのお客さんと連絡先を交換する時に、定期入れに挟んでいたカープファンクラブの会員証が落ちたんですよ。
お客さん大激怒で『テメェとはやっぱり仲良くなれない!』と拒否されたことがありました(苦笑)」

写真 ファンクラブの会員証が落ちたんですよ cカトウカジカ
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ダブルワークの忙しい日々だったが、全てはカープのため、借金返済のため。しかし、事態はより深刻化する。2016年、25年ぶりのセ・リーグ優勝だ。
「人生で一番嬉しかった年だと思います。正直お金はキツかったけど、周囲から『25年ぶりだから』と後押しされました。
無理してクライマックスシリーズ、日本シリーズも全部遠征して現地観戦しました。結果、減ったはずの借金の総額が増えてしまって……」

リボ、リボ、リボ、リボ、リボは続くよ何処までも。2017年は熟女キャバクラの出勤数を週4回に増やし、借金返済に勤しんだ。
順調に勝ち続けるカープの大進撃に喜びを感じると共に、年末に向けて不安も大きくなっていった。「また今年も日本シリーズに行くのか!?」と……。

カープは143試合を終えて貯金37に対し、内藤さんは143試合を観終わって借金残額132万円だった。

「球場には“カープ女子”が当たり前になりました。可愛くユニフォームを着こなす彼女たちは、とっても華やか。でも私は……。
ホームランの時に彼女たちにハイタッチを求められたとき、一瞬躊躇してしまう自分もいます。もしも2017年に日本一になっていたら、もしかしたらカープファンを卒業していたかもしれません」

「私は本当に“カープが好き”なのか!?」、オフシーズン中、毎日のように自問自答を続けていたが、習慣で選手情報を眺め、気がつけば2018年度のファンクラブも更新し、中村奨成を拝みに春季日南キャンプの旅行も計画していた。

「葛藤しながらも、カープ愛が勝ってしまう」 2018年、内藤さんはカープ女子・かな子として生きていく。