音楽番組が減った――と言われて久しいが、“素人のど自慢番組”はむしろ増えている。

 年明け1月3日には「全日本歌唱力選手権  歌唱王」(日本テレビ系)がおよそ4時間半に亘って放送され、翌4日には「THEカラオケ★バトルスペシャル【U-18歌うま大甲子園 最強王座決定戦】」(テレビ東京系)が2時間半。他にも「のどじまんTHEワールド!」(日テレ系)、「今夜、誕生! 音楽チャンプ」(テレビ朝日系)……確かにみんな歌が上手いけど、どこもかしこも、ちょっと多すぎない? 

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 古くは「NHKのど自慢」(NHK総合テレビ・ラジオ第1)、1946年に放送開始(当時はラジオのみ)という化け物のような番組も、プロへの登竜門として、山口百恵などを輩出した日本テレビの「スター誕生!」(71〜83年/日本テレビ系)などもプロの審査を経て、歌の優劣を競う番組だった。

 そこへ、カラオケマシーンという単純な機械による採点で、歌の優劣を競うという斬新な番組を作ったのは、やはりテレビ東京だった。

「何点、何点、ウーッ何点ッ!」

 古稀を超えても、なお喧しい司会のマチャアキ(堺正章・71歳)の声が響き渡る「THEカラオケ★バトル」。素人参加番組ながら玄人裸足の歌声を、カラオケマシーンで採点する、“採点番組”のハシリである。

審査員も演奏者も取っ払ったテレ東の企画力

「カラオケ★バトル」という特番での放送がスタートしたのは2006年9月のこと。当初は一世を風靡した歌手が自分の持ち歌でタレントと競う番組だったが、2014年4月からは「THEカラオケ★バトル」と改め、素人参加をメインに据えてレギュラー化。

 番組スタート時から見ているという、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)が分析する。

「他のキー局に比べ、圧倒的に番組制作予算が少ないため、企画力で勝負するテレ東らしい番組です。『池の水ぜんぶ抜く』や『孤独のグルメ』なども金をかけずに成功していますからね。そもそも、のど自慢番組は予選などに手間はかかりますが、プロミュージシャンの音楽番組に比べたら、セットも共通、ギャラも不要で、お金がかかるのは、司会と審査員、演奏者程度。しかし、そこから審査員と演奏者の予算まで取っ払ったのがテレ東の凄さです」

「THEカラオケ★バトル」で目玉と言えるのが、「U-18大会」であり、18歳以下の素人(稀にプロも出場)が、常連の“U-18四天王”と競うシリーズだ。今年は年末に過去シリーズの再放送を流し、満を持して1月4日に特番として放送したのだが……。

 その前日、1月3日に放送されたのが「全日本歌唱力選手権 歌唱王」。ちなみに日本テレビはこの日、朝7時から「箱根駅伝(復路)」をおよそ7時間に亘って放送し、夜は「歌唱王」で4時間半と、この日1日は2番組で済ましてしまったかのような編成だった。

 年に1回放送される「歌唱王」がスタートしたのは13年12月9日のこと。こちらもカラオケで歌を競うのだが、採点は機械ではなく、審査員と視聴者が行う。過去4回に亘って12月に放送されていたが、今年はテレ東にぶつけるかのように1月に放送された。

つづく

1/13(土) 6:30配信 新潮
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180113-00536149-shincho-ent