「N’s method」で野球指導を務める中村紀洋氏へのインタビュー前編は、プロ野球生活を中心に語ってもらった。
そこで得た経験と知識は今、指導の道でどのように生かされているのだろうか。
そして、野球を通じて何を教え、伝えたいのか。ここでは、中村氏の指導理念と現在をお届けする。

「信用していたコーチから『振れぇ!』と言われて。『3球振って帰ってこい』で、ストライクを見逃したら怒られる。
全部振ると『OK! それや!』って」
中村氏がプロの世界へ飛び込んでからほどなくして叩き込まれたフルスイングの礎は、
現在も野球指導を行う上での土台となっている。

「当てにいくとか、中途半端なことは絶対に勧めない。『思い切り振って3球振って帰ってきなさい。
空振り三振でいいよ、次に生きるから』と教えています。プロ野球選手でもあの時やっておけばよかったと、
どこかに後悔が残ります。後悔しないように、満足して野球人生を歩む。社会人になっても最終的には
『よし、俺はよくやった』と思えるような努力をしてほしいと思います」
(略)

指導方法はシンプルだ。真新しいことを推奨するわけではない。
選手それぞれに合う方法があるため、そこは崩さないように注意する。思考が整えば、あとはどう積み重ねるか。

「天性のものなんて絶対ないから努力する。努力することによって何かをつかめます。
それをつかんだらいつでも打てるようになります。でも、それは誰も教えてくれないので、プロでもつかめないまま
終わった人がいっぱいいました。自分はつかめたから、長くできた。誰も助けてくれないので、やると決めたらとことんやる。
プロも簡単な世界ではなかったので、自覚を持って、何事も自分でチャレンジして解決しない限りは絶対に成功できない」

求める努力は、量ではなく継続にある。「『1万回も振らないでいいから。30球だけ思い切り振って、それを毎日続けてみよう』
と教えています」。育みたいのは、諦めない心だ。
(略)

現在はプロ野球を「全然、観ていない」と言うが、後進も気遣う。
「本当に完全燃焼して、やれるところまでとことんやってほしい。楽しんでやればファンにも伝わるし、
それで観る側も楽しくなればファンも増えるでしょう」

気になる現役選手には、やはり振るバッターとして「柳田悠岐(福岡ソフトバンク)」を挙げた。
「怪我をするなよと思いながら。振ってもいいけど、ケアをしないといけない。若かったらできることもあるけど、
26歳と29歳のスイングは絶対に変わるから。同じように考えて振っているようなら、怪我をして終わる。
だから、ちょっとずつモデルチェンジが必要。自分は周りの人間に見せないようにして、どんどん振り回しながら変えていた」

中村氏の豪快なフルスイングは、もう見られないのだろうか。「プロ野球のチームからオファーが届いたら」との問いには即答だった。
「行かない。僕を信用、信頼して来てくれる生徒が1人か2人だとしても、子供たちが離れるまでは面倒を見たい。
今は子供たちに、野球選手として一人前になる準備をさせないといけない。これからうまくなれる土台を早く作ってあげて、
高校に送り出したい。プロ野球のチームから『戻ってこい』とオファーが来ても、行かないと思う。
行ったとしても、その子たちのことが気になるから集中できない。一つのことに集中したいから、今は子供たちのためにどうしたらいいかを考えています」

「生涯現役」を掲げる中村氏は、これからも野球と向き合い続ける。指導の道でもフルスイングの信条を貫きながら。

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