新海誠は「若者にとって、未来への希望や淡い恋がセカイの全て」
「巨大な世界の前では個人の願いは無力」ていう矛盾する2つの真実を描いてきた

巨大な世界っていうのは二人を引き裂くインターバルだったり、運命だったり
そういうどうしようもならないもの

今までの主人公はそれに抗おうとしなかったけど君の名は。の二人は時間っていう本来不可逆のものが逆行することで出会ったので運命に抗うことが出来る

君の名は。における運命というのは自然災害としての彗星

でもこれは同時に二人を引き合わせた“結び”でもある

だから悲しい場面では恐怖の対象として描かれるけど、二人が一時の逢瀬を果すカタワレ以降は希望の象徴として美しく描かれる

こういうのはアニメのディフォルメを上手く生かしていた

運命の前に1度折れそうになった三葉が再び立ち上がる場面で初めて瀧の視点が中学生時代にスライドする

まだ出会わぬ二人をカットバック(同じ時間の別の場所を交互に描くこと)で撮す

この時点で初めて物語は変えられなかった3年後を語る話から
未来を語る話になる

つまり個的な真実としてのセカイが世界を圧倒したということ

だから厄災の象徴である彗星を「美しい」語る二人の声が重ねられるんだよ

このシーンは映像とストーリーの両方で対比される2つのテーマの上に、災害×ラブソングを流す黒澤明的な演出も加わり

さらに「運命は希望と絶望の二面性を持ち、自然(災害)や超自然(信仰)のように未知数だ」という達観まで感じた

そして二人は不思議な出会い(“夢”見る青春期)を文字通り忘れ、大人として出会うことによって本当の恋をはじめた所で映画は終了