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二宮: 金田さんが監督に就任した時、パ・リーグの観客動員はセ・リーグに
圧倒的大差をつけられていた。ベースコーチに入って“カネヤンダンス”を
やったのは、お客さんを喜ばせようとした側面もあったのでしょうか?
金田: いや、喜ばそうとしてやったわけじゃない。でもお客さんを第一に考
えた野球はやっていたね。繰り返しになるけど、野球はコマがなきゃ勝てない。
単純なことですよ。ピッチャーとバッターに力があって、コンディションを整
えて、人の10倍練習して、10倍節制すれば勝つ。巨人だって9連覇した時はひ
とりひとりが他チーム以上に練習をして全力を出していた。それが結果として
チームワークとなって勝っていたんです。

二宮: 勝つには人の10倍の練習が必要。だから選手たちには「走れ走れ」と
指示を出していたわけですね。 
金田: 「走って野球がうまくなるか」と言ったバカがいるけどうまくなり
ます。当たり前じゃん。100%で走ったら、その分、節制もしなきゃいかん。
食事や睡眠はもちろん、マッサージなどすべてのことをしなきゃいかん。技術
はもちろん大事だけど、やはり管理、ケアがきちっとできなきゃ、いい成績は
残せない。おかげでロッテの監督時代にピッチャーで故障者はあまりいなかっ
たでしょう。金田正一が野球界に残したものには数々の記録もあるかもしれ
ないけど、こういったコンディショニングの大切さを伝えたという自負はあるね。

二宮: 金田さんは現役時代から栄養面でもかなり気を使って食事をしてい
たと聞いています。それは経験に基づいたものですか?
金田: 食べなくて勝てる商売があるかね? 歴史を振り返っても豊臣秀吉
は戦いにあたって、まず沿道に食糧を備える計画を立てていたそうです。野
球もまず、いいものを365日、3食きちんと食べなきゃ話にならない。今のプ
ロ野球で400勝てるピッチャーがいますか? なぜ、私が記録をつくることが
できたのか。それは第一に食べることができたからですよ。巨人に行った時
に川上(哲治)監督から「金田は食べることを教えてくれた」と言われまし
たよ。食事がV9の礎になった。このことをもっと今の野球に携わる人間は
知っておいてもらいたいね。

二宮: いいものを食べるためなら、多少の出費は厭わなかったとか。
金田: もちろんです。最高級のものを食べる。なんでプロ野球選手は年俸
を何千万円ももらっているのか。月10万円で生活している人と一緒の食事じ
ゃダメなんです。しっかり使わないと世の中のバランスもとれない。だけど
今の子は預貯金に廻しているようだね。カネなんて使える時に使っておかな
いと、あてにならないですよ。

二宮: 今季、ダルビッシュ有が金田さんでも達成できなかった5年連続防御
率1点台を記録して海を渡ります。金田さんのダルビッシュ評は?
金田: アイツはまだ8割くらいの力しか出していないでしょう? 100%の
能力を発揮したら、金田正一を超越するものを持っている。何も160キロを投
げる必要はない。そんなのを目指したら、どこかで反動がきますよ。僕だって
投げようと思えば160キロを放れたと思うけど、それをやらなかったのは故障
しないため。それよりも足腰を鍛えて、もう少し2枚腰が使えるといいな。も
っと腰をためて間をつくれるようにしたら、メジャーリーグでも勝てる。パッ
と放るんじゃなくて、グッとためをつくれば打者とのタイミングもずらせる。
これを覚えれば、もっとすごいピッチャーになりますよ。