■田邊伸明氏に訊く今冬の移籍動向 「クラブ格差がつく元年になる」
 
Jリーグは2017年から10年間、パフォームグループが運営するスポーツのライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」と放映権契約を締結し、約2100億円という莫大な資金を得ることになった。
これにより各クラブは、今季から配分金が増額される形で恩恵を受けることになるが、このいわゆる「DAZNマネー」は日本の移籍市場にどのような変化をもたらすのか。
長年にわたってFIFA公認代理人として活躍し、国内外の移籍動向について熟知する田邊伸明氏に話を訊いた。

今季開幕前、Jリーグは今後3年間の配分金を決定。“DAZNマネー”は「均等配分金」「理念強化配分金」「賞金」「降格救済金」「ACLサポート」の5つに分類されて、各クラブに支払われる。
全クラブ一律の「均等配分金」を見ても、例えばJ1の1クラブあたりでは昨季の1億8000万円から3億5000万円へほぼ倍増。

各クラブが“DAZNマネー”の恩恵を受けることになるが、移籍市場への影響を考えた時、ポイントとなるのが新設された「理念強化配分金」だ。
これは年間4位クラブまでに3年間にわたって支払われるもので、今季で言えば優勝した川崎フロンターレが3年総額15憶5000万円、2位鹿島アントラーズが3年総額7億円、
3位セレッソ大阪が3年総額3億5000万円、4位柏レイソルが3年総額1億8000万円を得ることになった。

この上位クラブが多くの資金を得る制度がスタートしたことで、田邊氏は来季のJリーグが「クラブ格差がつく元年になる」と指摘する。

「一部のクラブが活性化し、格差がつくことは間違いありません。そもそも、Jリーグは各クラブの格差が緩やかなんです。
リーガ(・エスパニョーラ)のようになってしまっては困りますが、今回の移籍市場でそうした傾向になりそうなアクションが、すでに起きています

それでは上位クラブが“DAZNマネー”を得ることによって、今オフの移籍市場ではどのようなことが起こるのだろうか。

■来季開幕までに新助っ人を狙うのは難しい

まずポイントとなるのは、上位4チームでも順位によって倍も異なる金額と、最終節までもつれた今季の優勝争いだ。
大逆転で劇的なJ1初制覇を果たした川崎だが、田邊氏によれば「お金を使わなくてはいけないと言っていたから、急に慌ただしくなっている」と、嬉しい悲鳴を上げているようだ。

2位であれば「賞金」「均等配分金」「理念強化配分金」のトータルが11億7000万円だったところが、優勝したことで22億円にほぼ倍増。
それだけの金額を獲得できると決まったのは、12月2日に行われた最終節の結果を受けてからだったため、“お金の使い道”について事前に準備できていないという。

潤沢な資金を誇るクラブの補強というと、創設当時のJクラブがそうだったように、多くの人が「大物外国人」の獲得をイメージするかもしれない。
今年ヴィッセル神戸が元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキを獲得したように、欧州でプレーする選手を狙うならシーズンが切り替わる夏の移籍市場での獲得を目指すことになる。
また契約満了選手は、移籍ウインドーに関係なく獲得できるが、来季のJリーグ開幕に向けて今冬に新外国籍選手を獲得しようとする場合、田邊氏は時期的な問題から難しいと指摘する。

「普通に考えると、この時期は来季開幕までに獲得したい外国籍選手の狙いは定まっていて、すでにオファーを出しているもの。
枠が余っていて、急にお金もできたから、リストアップしていた中からもう一人獲ろうというケースはあるかもしれませんが、このタイミングで外国籍選手を、冬の移籍市場で新たに獲りにいくというのはスケジュール的に少し遅い。

DAZNがJリーグと契約した時、賞金を得るクラブが大物外国人選手を獲るといった話がクローズアップされていましたが、実際は賞金を元手にして来季開幕までにそういう動きを行うのは難しいと思います。
来年1月中旬に新チームが始動し、ましてや上位クラブはACLを戦うから全体的に早くなる。つまり、お金をもらうところほど強化スケジュールが早くなるから、それに合わせて外国籍選手を獲りにいくのは難しくなるんです。
本当に大物外国人選手の獲得を狙うクラブは、資金を夏まで取っておくでしょう」

そうした事情を踏まえて、田邊氏は“DAZNマネー”によって今冬の移籍市場で起きるのは、「違約金がかかる日本人選手の移籍」だと予想している。


つづく

12/22(金) 19:01配信 ZONE
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171222-00010015-soccermzw-socc