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 先行有利な流れだったことは、前半1000m通過61秒6という時計が示している。
「ダートでは少しずつギアが上がっていく馬が多いのに、この馬は切れ味がすごい」とムーアが言うゴールドドリームには不向きな流れに思われたが、スローの瞬発力勝負になったことが幸いした。

 褒めすぎかもしれないが、初騎乗でその桁外れの瞬発力を引き出したムーアの騎乗は、見事だったというほかない。

 もちろん、ムーアだけが走らせたわけではない。フェブラリーステークスを勝ったあと、惨敗がつづいたことには出遅れ癖が影響していた。
それを矯正するため、ゲート内に縛って動かないようにし、さらにプール調教を併用してリラックスさせるなど、陣営の工夫があった。

■ 外国馬はゼロでも、ムーアはワールドクラスだった。

 同一年のJRAダートGIコンプリートにより、ゴールドドリームは最優秀ダートホースの座を大きく引き寄せた。

 年内は休養し、来年は連覇がかかるフェブラリーステークス、今年最下位だったドバイワールドカップなどを見据えていくようだ。

 オーナーの吉田勝己ノーザンファーム代表は「まだ4歳と若いから今後が楽しみ。ゴールドアリュールの後継種牡馬になってほしいですね」と笑顔を見せた。

 首差の2着だったテイエムジンソクは、13番という外枠からのスタートだったため、出して行ったら掛かってしまった。そのぶん最後の伸びに響いた。

 3着のコパノリッキーは、自分の競馬に徹した結果の大健闘で、9番人気という低評価を見返した。

 プレビューで◎をつけたケイティブレイブは4着。中央のGIを勝つには、もうワンパンチほしいように感じた。

 外国馬がゼロで寂しく感じていたが、名手ライアン・ムーアが「これぞワールドクラス」という騎乗で私たちを魅了してくれた。

(「沸騰! 日本サラブ列島」島田明宏 = 文)