その“信念”はどこへ――。

日本相撲協会は30日、東京・両国国技館で理事会を開き、巡業部長の貴乃花親方(45=元横綱)を3日の長崎・大村市から始まる冬巡業に同行させないことを決めた。

元横綱日馬富士(33)の暴行問題に関連して、相撲協会の幕内貴ノ岩(27=貴乃花)に対する調査が終わっていないことや巡業先の混乱を避けるため。

日馬富士の電撃引退で事態が新たな段階へと移るなか、貴乃花親方は部長として参加した今年の巡業中に関取衆の“酒盛り”に自ら参加していたことが判明した。

 この日の理事会は八角理事長(54=元横綱北勝海)の真正面に貴乃花親方が座り、同親方の両脇に協会執行部の尾車親方(60=元大関琴風)、鏡山親方(59=元関脇多賀竜)、春日野親方(55=元関脇栃乃和歌)が居並んだ。執行部による“貴包囲網”と言っていい席順。実際、理事会では貴乃花親方の責任問題にも話が及んだ。

 巡業部長の立場にありながら、10月の秋巡業中に日馬富士が貴ノ岩に暴行を加えたことを協会に報告せず、独断で警察に被害届を提出。また、協会側が貴ノ岩に対する調査を再三にわたって要請したにもかかわらず、師匠の貴乃花親方が拒み続けたことも問題視された。協会の危機管理委員長として問題の調査にあたっている高野利雄理事(元名古屋高検検事長)も「理事として、きちんと協力していただく責任があるのではないか」と苦言を呈した。

 最終的に貴乃花親方からは「警察の捜査(日馬富士の書類送検)が終わった段階で協会の調査に協力する」との言質を得たという。理事会での追及に、貴乃花親方が“譲歩”した格好だ。さらに理事会では、巡業部長の貴乃花親方を3日からの冬巡業に同行させないことを決定。春日野親方が巡業部長を代行する。

 渦中の人物である貴乃花親方が同行すれば、巡業先で混乱が生じることは避けられない。協会の貴ノ岩に対する調査が終わっていないことも“職務停止”の理由となった。一方で、その貴乃花親方が部長として参加した巡業中に関取衆の“酒盛り”に参加していたことが明らかになった。

 今年8月の夏巡業中でのことだ。ちゃんこ場(力士の食事会場)にはスポンサーから提供されたとみられる缶ビールや缶チューハイのほか、ワインのボトルなどがズラリ。

昼すぎには関取衆の間で酒盛りが始まった。やがて関取衆による“酒宴”の輪の中に、巡業部長の貴乃花親方までもが加わることに。大いに場は盛り上がり、なかなか席を立とうとしなかった貴乃花親方の姿が目撃されている。

 親方衆の一人は「力士同士が巡業で酒を飲むことがダメだとは思わない。巡業は期間も長いし、移動も大変。息抜きも必要」と前置きした上で「(一部で報じられたように)貴乃花親方が自分の弟子に“他の部屋の関取と酒を飲むな”と言うのなら(夏巡業中の行動は)明らかにおかしい。言っていることと、やっていることが違いすぎる」と首をかしげた。

 巡業中のちゃんこ場であろうと、その後の夜の街であろうとも、関取同士が酒を酌み交わしている点では同じこと。巡業部長として関取衆の酒盛りを容認しているばかりか、自ら輪に加わっていたとは…。世に伝えられている貴乃花親方の“信念”からすれば、確かに矛盾した行動に見える。

 相撲協会は今月20日に臨時理事会を開く予定。日馬富士の暴行問題の最終報告のほか、貴乃花親方の報告義務違反などについても協議される。今回の問題で被害者側であるはずの貴乃花親方の行動が、角界内に混乱をもたらしたことは確か。果たして、どんな処分が協会から下されるのか。

2017年12月1日 16時30分 東スポWeb
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