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(CNN) アラブ首長国連邦(UAE)の女子フィギュアスケーター、ザーラ・ラリさん(22)は、イスラム教徒の女性が髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」を着けて国際大会に参加した初の選手だ。世界選手権出場を夢見て練習に励むラリさんに、CNNがメールでインタビューした。

UAEは灼熱(しゃくねつ)の砂漠というイメージが強いが、実はアラブ諸国のトップを切って国際スケート連盟(ISU)に加盟した。湾岸諸国から初めて国際大会に出場し、スカーフ姿で演技を披露したラリさんのおかげだ。

アブダビ出身のラリさんがスケートを始めたのは12歳の時。ディズニー映画「アイス・プリンセス」を見たのがきっかけだったという。

アブダビに1カ所しかないスケートリンクへ通う日々が始まった。朝4時半に起きて登校前に練習し、午後にまた練習する。

だがUAEの女性たちは人前に出る時、ヒジャブや全身を覆う黒い衣装「アバヤ」を着用することになっている。ぴったりとしたスケートの衣装を着て男性の前で演技を見せるのは、簡単なことではなかった。

ラリさんの父は当初、女子がスポーツ競技に出ること自体に反対だった。ラリさんは父に迷惑をかけたくないと思い、競技には出ないことにした。だが仲間の競技に家族で出かけ、熱心に応援するラリさんの姿を見るうちに、父の気持ちは変化した。「今では父が最大のサポーターです」と、ラリさんは話す。

2012年にイタリアで開かれた国際大会に出場した。スカーフを着用したアラブ女性選手の前例はなく、衣装違反で減点された。判定をうらんではいないという。「審査員は当時、スカーフを着けた選手など見たことがなかった。だから私をどう採点していいのか分からなかったのです」

ラリさんはその後、ISUにルールの変更を求めた。すると責任者から、ラリさんに直接会ってスカーフの安全性を確認したいと連絡があった。

今年9月に出場したドイツでのネーベルホルン杯では、スカーフを衣装違反と見なさないようにという指示が出された。ただしこれは1回限りの措置。ISUでは今も、ルールについての検討が進められているところだという。

同じ9月には18年冬季五輪の予選にも参加したが、通過はかなわなかった。

「私の目標はUAE代表として冬季五輪に出る最初の選手になること。それだけでなく、四大陸選手権と世界選手権にも出場すること」と話す。今年は、アラブの女性スポーツ選手を応援する米ナイキのネット広告にも起用された。

現在はアブダビ大学で環境安全衛生を学んでいるが、卒業後はフィギュアスケートの指導者になるのが夢。父も今ではUAE初の正式なスケートクラブを設立し、母がその最高経営責任者(CEO)とラリさんのマネジャーを務めている。クラブのメンバーは75人まで増えた。

アブダビ唯一のリンクはホッケーチームが優先的に押さえてしまうため、トレーニングのタイミングを思うように調整できないのが目下の悩みだという。

ラリさんはそれでも前を向いて進み続ける。人々に送りたいメッセージを尋ねると、こんな答えが返ってきた。「一生懸命練習すること、集中を切らさないこと、情熱を持つこと、そして全力を尽くすこと。自分を信じ、目標を達成するのに遅すぎることはありません」

2017.12.01 Fri posted at 17:21 JST

アブダビ出身のラリさんがスケートを始めたのは12歳の時
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ぴったりとしたスケートの衣装を着て男性の前で演技を見せるのは、簡単なことではなかった
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