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 ところが、モンゴル出身の力士は、所属する部屋とは関係なく「モンゴル力士会」と称する集まりで親交を深めている。
これが、記者の間で「馴れ合いの温床になっているのでは」と指摘されていた。

 もちろん、貴乃花親方は貴ノ岩にもモンゴル力士との交流を極力控えるよう命じていた。前出の貴乃花親方の関係者は言う。
「暴行のあった日の朝、貴ノ岩は貴乃花親方に『階段から落ちてケガをした』と説明していた。それが後になって日馬富士から暴行を受けたことがわかり、
しかも貴ノ岩の出身高校のOB会だと思っていたら、白鵬や鶴竜らモンゴル人の横綱3人も来ていた。話が違うじゃないかとなり、貴ノ岩もきつく叱られたようです」

 ある親方はこう話す。
「白鵬は最初、日馬富士が1回殴った時に止めに入ったと話した。しかし日馬富士自身が『10発は殴った』『カラオケのリモコンでも殴った』と発言した。
つまりは、日馬富士が貴ノ岩を“かわいがり”していたことを白鵬はなかば容認していた。警察にもそこをかなり聞かれたようで、
協会内では、モンゴル力士同士の仲間割れによるリンチではないかと見られている。よほど貴ノ岩は恨まれていたのではないか」

 本場所15日間の取組では、優勝決定戦を除き、同じ部屋に属する力士が対決することはない。部屋が違っても、親戚同士であれば取組が組まれることはない。
土俵外で関係の深い力士同士で取組をすると、いわゆる“星のやり取り”が生じやすくなるためだ。

 現在、幕内力士42人のうち、モンゴル出身の力士は9人で、約2割を占める。所属する部屋が違う力士が、出身の国が同じだからといって必要以上に親睦を深めることは、他の力士の成績に影響が出かねない。

 ただ、協会に報告をする前に警察に被害届を出し、騒動が拡大し続けている状況に、貴乃花親方を批判する声もある。別の親方はこう話す。

「問題は、相撲協会と貴乃花親方の両方にある。しかし、被害者は貴ノ岩であり貴乃花親方。相撲協会が貴乃花親方を悪者にすると、貴乃花親方は態度を硬化させるだけだ」

 モンゴル人力士に限らず、力士同士の馴れ合いはこれまでも繰り返し問題になってきた。
暴行事件に端を発して、現在の角界にメスを入れようとする貴乃花親方の“乱”の行方は、ますます見通せなくなっている。(AERA dot.編集部)