>>470続き

(略)たしかに政治の表舞台で活躍したわけではないだろう。
しかし、薩長同盟、大政奉還、五箇条の御誓文など、裏方として近代国家の誕生に
果たした影響はきわめて大きい。なにより、彼のような縁の下の力持ちの重要性を
高校生に教えることも必要ではないだろうか。

やや脱線するが、相次ぐ大企業の不祥事などは、経営者の方たちに、
地道に現場で汗を流す、いわば裏方への配慮が不足していることが原因のような気がしてならない。
さらに言えば、今回の歴史教科書の用語精選のニュースはテレビ朝日の報道番組でも
取り上げられていた。
だが、それを見ていて、とても驚いた。
「坂本龍馬は昔、教科書に載っていなかった」というとんでもない誤報を流していたからである。
ここではっきり言っておくが、坂本龍馬が昔の教科書には載っていなかったというのはウソである。

たとえば、昭和18年の国定教科書(『初等科国史 下』文部省)には、
「朝廷では、内外の形勢に照らして、慶応元年、通商条約を勅許あらせられ、
薩・長の間も、土佐の坂本龍馬らの努力によって、もと通り仲良くなりました」

と記されている。
とくに薩長同盟の箇所には、西郷隆盛や木戸孝允は登場せず、薩長を取り持った人間
として坂本龍馬の名前だけが出ているのだ。国定教科書ゆえ、この記述は国民が
みんな読んだはずだ。つまり人気があったかどうかは別として、坂本龍馬が戦前なら
誰もが知っている偉人だったことは間違いない。