「個人情報の特定はパズルをとくようなもの」 「一体感が得られた」 ネットリンチに加わった人たちの声です。SNSやブログの発言などをきっかけに、批判的な意見が集中し、まるで燃え広がるように拡散する現象「炎上」。それがエスカレートして、発言した人の個人情報がさらされたり、実生活にも深刻な被害が及ぶ「ネットリンチ」。被害者と加害者の双方に取材、その実態と対策を探ります。
ネットリンチ 投稿続々と

「あるアイドルのコンサートに行った時のことをツイッターにあげたら大量にリツイートされ、瞬く間に個人情報がさらされた。大学生なので就職活動に響かないか心配です」

「ネットでの嫌がらせだけでなく、取り引き先の企業などに「○○を使うな」というような嫌がらせメールが大量に送られ、被害は拡大する一方です。解決法は死んでしまうくらいしかないな、とずっと考えています」

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NHKがインターネットで情報を呼びかけたところ、寄せられたネットリンチの被害者たちの声です。

このうち30代の女性に直接会って話を聞くことができました。きっかけは、趣味に関するツイッターなどで行った発言でした。

誰かを傷つける意図はなく、なにげ無い言葉のつもりでしたが、誤解して受け取られ、非難の声が上がりました。「キモいよ」「にわか知識でドヤ顔するな」などと女性を中傷する言葉がSNSや掲示板に次々と書き込まれます。

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事実と異なることまで書かれたため、SNSで反論すると「本人降臨」と、さらに話題になり、炎上はどんどん広がっていきました。ほどなく実名や母校、勤務先、顔写真などが特定され、ネット上にさらされました。

「次々と個人情報がさらされ、仕事も手につかず、外出してもみんなに監視されているような気がしていました。トイレに行くたびに掲示板をチェックしてしまうなど不安で眠れない日々が続きました」

女性は、その後SNSのアカウントを削除。今はネットから距離を置いていると、話します。

炎上しやすいのは「一般人」

こうした一般人が炎上やネットリンチの対象となるケースが増えています。

NHKでは、去年6月からことし10月までの500日間にネット上で話題になった「炎上事例」合わせて1100件余りを、国際大学の山口真一講師の協力を得て調査、分析しました。分析にあたっては、「批判的な意見の集中がある」「一定の広がりがある」などの基準をもとに、炎上事例を抽出しました。

そのうえで、ツイッターのリツイート数が1000以上の炎上事例、420件余りについて、批判や非難の矛先が向いた対象を、「一般の人」、「政治家・自治体」、「企業・営利団体」、「報道・メディア」、「タレント・学者など」「ユーチューバー・ブロガー」「その他」の7つのジャンルに分類しました。

その結果、最も多かったのが「一般の人」で、118件あり、全体の中での割合は27.6%でした。

さらに、どの対象が炎上しやすいかを見るために、炎上した投稿のジャンルごとの平均のリツイート数を調べたところ、同じく「一般の人」が1万8175で最も多く、次いで「企業・営利団体」が1万1189、「報道・メディア」が8232などとなっていました。

国際大学の山口真一講師は「一般の人は、もっとも炎上の対象になっているだけではなく、炎上すると、特に規模が大きくなりやすい傾向にあると言える」と話しています。

ネットリンチの実態

ネット炎上の末、深刻なネットリンチを長期間にわたって繰り返し受けている人がいます。

弁護士の唐澤貴洋さんです。
https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/still/web_tokushu_2017_1113_img_05.jpg