何かとストレスの多い社会、銭湯の果たす役割は大きくなっているのかもしれない。コラムニストの石原壮一郎氏が銭湯ジャーナリストの元を訪ねた。

 * * *
 あなたが銭湯に最後に行ったのは、いつのことでしょうか。昔からよく知っているからこそ、よさに気が付かないということは、よくあります。そして、外国人が高く評価してくれたことで、日本人もあらためてそのよさに気付くパターンは少なくありません。近ごろ人気が高まっている銭湯も、そのひとつと言っていいでしょう。

 日本への留学をきっかけに銭湯にはまり、インスタグラムを中心としたSNSやブログ「Dokodemo Sento」で銭湯の魅力を発信し続けているのが、南フランス出身で銭湯ジャーナリストのステファニー・コロインさん。全国700軒以上の銭湯に入りまくり、2015年12月にはその銭湯愛と旺盛な活動が認められて、日本銭湯文化協会から第一号の「銭湯大使」に任命されました。

 このほど発売された初めての著書『銭湯は、小さな美術館』(啓文社書房)には、彼女ならではの視点と感性で見つけた銭湯の素晴らしさが、ぎっしり紹介されています。ページをめくって驚くのが、銭湯のいろんな部分にレンズを向けて切り取った写真の美しさ。すべて彼女が訪れて、自分で撮影したものです。直撃して、お話を伺いました。

「銭湯はアートがいっぱいで、素敵なコミュニケーションが生まれる空間。日本にしかない素晴らしい文化です。銭湯に行ったことがない人、銭湯を知らない人にも興味を持ってほしい。そう思って銭湯の魅力や情報を発信しています」

 何かとお疲れ気味のおじさんにとっても、銭湯は救いの手を差し伸べてくれるはず。銭湯の効能や活用法を誰よりもよく知るステファニーさんに、「おじさんこそ、銭湯にどんどん行ったほうがいいですよね。どういう点がオススメだと思いますか」と尋ねてみました。「もちろん、おじさんにとっても銭湯はとてもいいところです。楽しい習慣になるはずです」と無茶振りをドンと受け止めつつ、考えてくれたオススメの理由は次の5つ。

●大きなお風呂に入ることで疲れやストレスが効果的にとれる
●銭湯であたたまると風邪をひきにくくなるなど、健康にいい
●湯上りのビールがおいしい! 脱衣場で飲むビールは格別!
●新しい銭湯に行くことで、知らない街を歩くきっかけになる
●常連さんからローカルな情報を教わったりできるのが楽しい

 なるほど、まさにおじさんにとって必要な、おじさんだからこそより深く味わえるメリットがいっぱいです。脱衣場でテレビをながめながらボーッと缶ビールを飲むもよし、知らない街で知らない店に入ってみるもよし。赤ちょうちんで「そこの○○湯に入ってきたんです」と話せば、お店の人とも隣の席の人とも、一気に打ち解けられるでしょう。

「初めての銭湯に行くのは、ちょっとドキドキするかもしれません。でも『こんにちは』とちゃんと挨拶して、『いいお湯ですね』と話しかければ大丈夫です。私は旅行に行くと、必ず地元の銭湯に行きます。三重県の伊勢に行ったときも、銭湯で一緒になった方に伊勢神宮のお参りの仕方や、近くのおいしいお店を教えてもらって、とてもよかったです」

つづく

NEWSポストセブン2017年10月21日16時00分
https://news.infoseek.co.jp/article/postseven_622627/

写真
https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/postseven/postseven_622627_0-small.jpg