10月にスタートし、20%前後の好調な視聴率を記録している連続テレビ小説『わろてんか』。
このドラマを「“ベタな朝ドラ”」と評する「テレビウォッチャー」主任研究員の大石庸平さんが視聴者の声をもとに、今後の見どころを解説する。

『わろてんか』は、吉本興業の創業者・吉本せいをモデルに、“笑い”を商売とするために奮闘した女性の一代記。
実在の偉人がモデルで、夢に向かってひた走るヒロインを子役が演じる幼少期からスタートする今作は、
これまでの朝ドラのフォーマットにのっとったまさに“ベタ”な朝ドラと言っていいだろう。

ストーリーに目を向けてみても、第1話のラストでおてんばなヒロインが父の大事な商談を、テーブルに置かれたごちそうを
ひっくり返して台無しにしてしまう流れは、既視感を通り越して“今回はベタでいく!”と宣言したようでもあった。
そしてその“ベタ”こそがこのドラマの成否を握るカギとなりそうだ。

テレビ番組の“満足度”を調査しているデータニュース社のテレビ視聴アンケート『テレビウォッチャー』によると、
『わろてんか』の初回満足度は3.43(5段階評価)と高満足度の基準が3.7以上のため、決して高くはない数値。

データが残る2012年下半期以降の朝ドラの初回満足度と比べても、『純と愛』3.08、『あまちゃん』3.80、『ごちそうさん』3.12、
『マッサン』3.54、『花子とアン』3.30、『まれ』3.62、『あさが来た』3.53、『べっぴんさん』3.52、『ひよっこ』3.57と、
計10作品中ワースト3とやはり高くない。

だがワースト2作の『純と愛』『ごちそうさん』が、好評だった『梅ちゃん先生』『あまちゃん』の後で、視聴者が前作と比較して
満足度を落としたように、今回も好評だった『ひよっこ』後で同じ傾向が現れたといっていいだろう。
初回満足度が低いからと言って、それだけで今作が期待できないとはもちろん言い切れない。

視聴者の感想を見ると「ありがちな朝ドラの導入だな」(43歳女性)、「朝ドラで散々見てきたパターン」(34歳女性)、
「べたな展開過ぎてちょっとげんなりする」(37歳女性)など、現段階ではまだ“ベタ”に対してはポジティブに受け止められてはいない様子。

一方、主人公がこん睡状態のまま目覚めずバッドエンディングを迎えるなど、シリアスな展開の連続で朝ドラ的展開をあえて崩した
『純と愛』の満足度が先の過去9作品中最下位(期間平均3.39)だったように、視聴者は安心感を与えるベタな展開を望む傾向もある。

第9話で、悪い男に絡まれ窮地に立たされたヒロインの前に見合い相手の紳士(高橋一生)が颯爽と現れ救うという
まさにベタなシーンには、「助けてくれたのがお見合い相手なんて話ができすぎているとは思うけど、楽しみ」(60歳女性)、
「縁談相手に偶然助けられるところも、ナレーションでうまくかわされ、納得」(58歳男性)など、
この回で登場した高橋一生のおかげもあるが、『ひよっこ』に続き視聴者の声を代弁するようなナレーションの効果もあり、
シーンによってはベタを好意的に受け止める視聴者も増えてきた。

常にベタでは新鮮味がなくなってしまうが、それがハマれば様式美にもなる。
そのさじ加減が最も難しいのだが、今後それをどう調整していくか、制作者たちの腕の見せ所だ。

https://news.infoseek.co.jp/article/postseven_621143/?p=1