『アウトレイジ最終章』は、アウトレイジ3部作の最後になるけど、『アウトレイジ』(2010年)と『アウトレイジ ビヨンド』('12年)を見たヤツは絶対に見ると思うから、興行収入もそれなりに期待してるぜ。赤字にはならないだろうと思う。

 最終章を作るとなったら新たに「カネ出すよ」って言ってきた人もいたんだけど、新しい人は断って、今まで通りの出資者にしたんだ。テレビ局もテレビ東京にしてね。急に変えるわけにいかないから。

 これまで、映画に関してのインタビューをさんざん受けてきたけど、監督として取材受けると、インタビュアーが映画を気に入ってるか気に入ってないかすぐ分かるんだ。この映画で受けたインタビューでは、気に入ってないという感じのインタビュアーがいなかったね。結構、評判はいいんだよ。

 ところで、なんで3作目で「最終章」にしたかっていえば、本当は長続きさせようと思えばできるんだよ。でも、パート1とパート2でいっぱい死人が出た。深作欣二さんの『仁義なき戦い』シリーズじゃないんで、一度死んだ人間がまた出てくるわけにはいかないということで、3部作でちょうどいいんじゃないかと。まあ、これが一応、一区切りとなったけど、また何年かたったら、日本の役者オールスターズでとんでもない映画を撮ってみせようとも思ってるぜ。

 今回、初出演したピエール瀧が「顔バトル」と評したほど、役者がコワモテ揃いなんだけど、やっぱり西田敏行さんとか塩見三省さんの芝居はすごいよ。普段はあんなに体調悪いのに、やっぱり役者は「スタート!」って声がかかると、シャキッとして急に変わるんだ。「はいカット!」って言うとヘナヘナってなるんだけど(笑)。
 最初の衣装合わせなんて、4人ぐらいに抱えられてきてさ。病院じゃないんだけどって思いながら「大丈夫ですか?」って聞いたら、辛そうに「大丈夫です。やります…」って言ってたのに、カメラが回ったら全然違う。やっぱり役者ってのはすごいと思ったよ。その西田さんは、セリフは完璧に入ってるのにアドリブばっかりやるから、編集でカットしてやったけどね(笑)。
 コワモテ揃いの一方で、女がいないって言われるけど、いらねーよ女なんか。ヤクザ映画に女を使うのはおかしいって。『アウトレイジ』には全然ハマんない。女使うのは『極道の妻たち』で十分だぜ。

 でもさ、最近は暴力を描いた映画を毛嫌いする風潮が強くなってきた。世界中でテロが起きてるし。だから今こそ逆に、表現方法として暴力の描写を解禁すべきだと思うんだけどな。
 エンターテインメントとしての描写と、現実のテロは一切関係ないのに、最近は結びつけてくる。それはどこの国も同じで、日本でもよく「リアルな暴力表現はよくない」とか言うけど、じゃあテレビゲームとかはいいのかって話でさ。ゲームにおける暴力の描写なんてムチャクチャにすっ飛んでて、どっちかと言うとテロはあっちの方に近いだろ? テロってのは理不尽なものじゃん。
 でも、こっちが映画で描いてるのは裏切りとか敵討ちとか、義理を果たす昔かたぎのヤクザがいれば、逆にカネ、カネ、カネで成り上がったヤクザもいて、いろんな理由があって行われる暴力なんだから。宗教的な考えの違いとかで一方的に爆破したりするものと、ヤクザ映画で描くものは全然違う話だけどね。こっちは関係ない人間を巻き込んだりはしないのに、それをテロと結びつけて「暴力描写はダメ」って言うのはおかしいよ。
 それでも、『第74回ベネチア国際映画祭』のクロージング作品(現地時間9月9日上映)として、よく上映されたもんだよな。ベネチア映画祭でも暴力映画ってのはあまり好まれてはいないんだろうけど、オイラの場合は、これまでも結構ヨーロッパに行ってるおかげか、ヤクザ映画の監督として認知してくれているのかな。ありがたいことだよ。

 
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