■エースである本田の立場

 ロシアワールドカップアジア最終予選、敵地でのサウジアラビア戦で本田圭佑が見せたプレーは、散々なモノだった。ボールを収められず、パスはタイミングが合わず、攻守の連係もちぐはぐ。右の翼は飛行不能に近かった。

「本田は終わったな」

 そういう感想や意見が渦巻いている。

 自身も低調なプレーを認めたように、代表選手にふさわしくなかった。ACミランからパチューカに移籍したが、実戦の少なさは深刻で、試合感覚を鈍らせているのだろう。危機的な状況にあることは間違いない。

 しかし、短絡的な「本田切り」で問題は解決するのか?

 10月、ハリルJAPANは本田を外し、ニュージーランド、ハイチと試合を重ねている。NZ戦、武藤嘉紀、久保裕也ら前線で先発した選手たちは、決して悪い出来ではなかった。シュートは決まらなかったものの、攻撃を活性化させていた。ハイチ戦、前線で抜擢された杉本健勇や乾貴士も才能の片鱗を見せている。指揮官が「就任以来、最悪のゲーム」と吐き捨てる中でも、それぞれ持ち味を発揮していた。

 しかし、もし彼らが本田の立場だったら――。きっと、銃弾を浴びせられるような厳しい批判に晒されていただろう。エースへの期待感と重圧は巨大だ。

■本田を超える選手は出たのか?

 改めて、本田は本当に代表にふさわしくない選手なのだろうか?

 代表選手は、「過去の代表における実績と直近のパフォーマンス」という二つの要素で選ばれるべきだろう。チーム戦術に馴染むか。それは代表監督の腕の見せ所であり、選んだ上で判断されることである。

 本田は2010年南アフリカW杯で日本代表を決勝トーナメントに牽引している。以来、日本代表の中心で戦ってきた。2015年3月にハリルJAPANが発足して以降も、チーム最多得点(9点)。本田はフィニッシャーとして期待され、決して本意ではない右サイドのポジションであるにもかかわらず、その役目を果たしてきた。

 ハリルホジッチのシステムは、4―2―1―3、または4―2―3―1と表記できるが、両ワイドのアタッカーはゴールを仕留める役割を託されている。逆足(プレーするサイドとは利き足が逆)で中に切り込んでシュートを打てる。左サイドでは原口元気がこの仕事を任されているし、右サイドで台頭した久保裕也は右利きだが、中に切り込んでからの左足のシュートも得意としている。

 ただし、本田は代表の中でも貴重な左利きのプレーヤー。フィールドプレーヤーでは、他に小林祐希くらいだろう。これも、本田を選ばざるを得ない要素の一つになっている。

 そして、本田は豊富な経験によるものもあるが、チームを引き回す戦術的なIQも高い。本来はトップ下でのプレーを本人は希望も、サイドでも遜色なくプレーできるし、トップとしても機能。昨年10月のオーストラリア戦はプレッシングの起点となり、カウンターの"火付け役"としてスピードを高めていた。

 原口や久保は「ハリルの申し子」として台頭著しいが、複数のポジションに適応することはできていない。久保は6月のイラク戦、左サイドで沈黙。原口もトップ下としては凡庸な出来に終わった。

「本田を実力で抜き去った」

 その状況にはなっていないのだ。

つづく

小宮良之  | スポーツライター10/11(水) 11:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20171011-00076715/

2017/10/11(水) 12:41:01.02
http://hayabusa9.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1507693261/