ご覧になっていただいている6着のユニフォーム。これらはすべて、パ・リーグ6球団が本拠地球場で来場者に無料配布したもの。実は筆者はすべて首都圏の球場で手に入れている。埼玉西武ライオンズの炎獅子ユニフォームだけは所沢のメットライフドームで、それ以外はすべて、千葉ロッテマリーンズの本拠地・ZOZOマリンスタジアムで手に入れた。

本拠地球場でしか手に入らないはずのものが、なぜZOZOマリンで入手できたのか。それは、千葉ロッテがZOZOマリンにやってくるビジターファン向けに、ビジターチームのレプリカユニフォーム付きチケットを一般販売したからだ。
プロ野球界に普及したユニフォーム無料配布

チケット購入者への無料ユニフォーム配布は、2004年に福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)が始め、13年の時を経てすっかり各球団に定着した。今では広島東洋カープ以外の11球団が実施しており、中には1シーズンに何種類も配布する球団もある。

ユニフォームの無料配布は集客効果が高い。閑散期や不人気カードに投入する球団もあれば、あえて繁忙期に実施するイベント付きゲームの目玉に位置づけている球団もある。

プロ野球ファンではあっても、ファンクラブに入会するほどではない、いわゆるソフト層のファンの観戦モチベーションを引き上げる効果が絶大なのだ。

もっとも、無料配布は基本的に本拠地開催のゲームのときだけなので、本拠地まで観戦に出向けない遠隔地のファンは基本的に入手できない。

「同じデザインのものが球団のオンラインショップで販売されているのなら、ほしければそれを買えばいいではないか、そもそもタダとはいっても実はチケット価格の中に、ユニフォーム代も含まれているだろう――」。こんな意見も聞こえてきそうだが、それは無粋というもの。シンプルにオマケはうれしいし、その日に本拠地球場へ行って観戦したからこそもらえることにも意味がある。

チケット入手が困難な対戦カードだったり、ケガで長期間離脱していた選手が復帰したり、何らかの記録が達成されたりすれば、その記憶とともに観戦記念になる。

それに、無料配布限定のデザインの場合もあるし、球団のグッズサイトで売っているものとデザインは同じでも、発注コストを当日のゲームスポンサーの提供で賄っていれば、そのスポンサーの広告タグが付いていて、それが配布された日の思い出と結び付くよい記念品になる。

そして、そもそも買うよりも間違いなく値段は安い。最も安いレプリカユニフォームの価格は球団によってまちまちだが、最低でも4000円以上はする。

しかし、無料配布日のチケット価格が通常の日と同額の場合は、ユニフォームは文字どおりタダ。繁忙期と閑散期でチケット価格に差をつけている球団でも、いちばんチケット価格が安い外野席をユニフォーム配布日であることを理由に5000円、6000円で売るということはない。ファンクラブ会員ではなくても、1900円で買える外野自由席のチケットで、ユニフォームがもらえたりするのだ。
ロッテ球団が始めた「双方向」の提供企画

そんな本拠地でしかもらえないユニフォームを、敵地で応援するファンも入手できるようにしたのが、冒頭に紹介した千葉ロッテの企画チケットだ。今シーズンは西武を除く4球団のビジターユニフォーム付きチケットを、通常価格プラス1500円で販売した。2015年シーズンから始めた他球団との共同企画で、ユニフォームはタダではないし、本拠地でもらう場合よりはプレミアム感は劣るのかもしれないが、「ファンには好評」(千葉ロッテ広報)だという。

初年度は北海道日本ハムファイターズとの間で実施。札幌ドーム開催の日ハム・ロッテ戦3試合で、ビジター応援エリアのチケットの一部をロッテのユニフォーム付きにする一方、QVCマリン(当時)開催のロッテ・日ハム戦2試合で、ビジター応援エリアのチケットの一部を日ハムのユニフォーム付きにした。

2年目の昨年は、対象チームをオリックス・バファローズ、福岡ソフトバンクホークスにも拡大。3年目となった今シーズンは、東北楽天ゴールデンイーグルスとの間でも実施した。

西武に関しては、今シーズン、メットライフドーム開催の西武・ロッテ戦6試合で、ロッテのユニフォーム付きチケットが販売されたものの、ZOZOマリンでは西武のユニフォーム付きチケットは販売されず、双方向での実施にはならなかった。そうなった理由はスケジュールの問題だったので、来期は双方向で実施される可能性が高い。

その西武も同様の企画をソフトバンクとの間で実施、楽天もソフトバンク、オリックス、日本ハムとの間で実施している。