3−3で引き分けたハイチ戦後の記者会見。ハリルホジッチはのっけから怒りっぱなしだった。

「就任以来28試合(正確には31試合)戦ってきた中で最悪」と吐き捨てると、具体的な選手名こそ出さなかったものの、選手のダメ出しを開始した。

「いい入りをして2−0になって、1点取られて、選手の頭の中に何が起こったかわからないけれど、急にストップしてキレてしまい……。こんなひどい試合、見たことない」

 ハリルホジッチは質問への答えもそこそこに、こんなフレーズをしつこいくらい繰り返した。最後まで怒りは鎮まらなかった。「謝罪します。メンバーを選んだ私に責任があります。どんどん批判してください」と、自虐的な言葉も幾度となく飛び出した。

 だが、そう言いながらも、自分に対する反省はまるで具体的ではなかった。何を誤った結果、このような事態に陥ったのか。選手のダメ出しは具体的だったが、自分へのそれは曖昧だった。反省しているようで反省していない。「批判してください」と潔さをアピールしたものの、それはポーズにも見えた。つまり、苦戦の本質を理解しているという感じではなかった。

 苦戦は、この日のスタメンを見た瞬間から予想された。いや、正確に言えば、それは10月6日に行なわれたニュージーランド戦のスタメンを見た瞬間から、になる。

 ニュージーランドとハイチ、強そうなのはどちらか。FIFAランキング的に言えば、113位対48位でハイチだ。W杯予選で敗退し、試合から遠ざかっているハイチの実情を加味しても、せいぜい互角(実際、そうだった)。にもかかわらず、ハリルホジッチはニュージーランド戦にベストメンバーとおぼしき選手を並べた。ハリルホジッチがあらかじめ「招集した選手全員を使いたい」と述べていたことを踏まえれば、ハイチ戦のスタメンは、ニュージーランド戦のスタメンを見た瞬間に読めたも同然だった。

 こんなアンバランスなメンバー構成で大丈夫か。あるいは結果を度外視しているのか。ハイチ戦への疑念は、ニュージーランド戦の開始前から募っていたのだ。

 ハリルホジッチはこの事態を予想できなかったのか。好意的に解釈すれば、予想できたが、予想できなかったように振る舞い、驚いてみせた――となる。そう考えたいが、だとするならば、ハイチ戦後の怒りの表情はポーズになってしまう。

 ハイチ戦に先発し、ハリルホジッチから激怒された選手は哀れと言うべきだろう。二軍的なメンバーで戦う11人に、チームとして機能しろというのは無理な注文だ。過去に一緒に戦った経験がないのだから。2−0でリードをしても、その後に失速することは十分あり得る。驚くべき話ではない。

つづく

10/11(水) 14:08配信 sportiva
https://sportiva.shueisha.co.jp/smart/clm/football/jfootball/2017/10/07/post_21/