61%対39%。日本はニュージーランドにボール支配率で大きく勝った。メンバー発表記者会見で「日本のサッカー教育はボール支配率をベースに作られているようだ」と切り出し、それに否定的な言葉を並べたハリルホジッチだが、試合は監督の趣味趣向とは異なる展開になった。

 ニュージーランドが5バックで後ろを固めてきたこと(ボールを奪う位置が低かったこと)。技術で日本に大きく劣ったことが、その大きな理由だ。日本の問題というより相手の問題。日本がどう戦っても支配率で劣る相手ではなかった。

 ただし、日本の戦い方は前半と後半で大きく違っていた。正確に言えば、後半15分より以前と以降。交代の1番手として、乾貴士と小林祐希がピッチに入る前と後だ。

 それ以前の日本は、ハリルホジッチの趣味趣向が反映された縦に速いスタイルだった。開始直後から、立て続けにシュートを放ちペースを握った。

 得点が入らない理由は、決定力不足と言われがちだ。この試合日もそうだったと思われるが、絶対に決めなければならないシュートを外したというシーンは、わずかに1度。香川真司が前半8分に放ったポスト直撃弾に限られるのだ。

 例えば、前半22分に放った武藤のシュート。あるいは、前半33分に放った久保のシュートは、惜しいように見えるが、実際にはそれほどでもない。それ以外の道を探した方が賢明な、強引なシュートだった。

「シュートは打ってなんぼ」。「打たなきゃ何も起こらない」と言われるが、決まりそうな予感がしないシュートを見るのはつらい。何かが起きそうな時は、シュートを打つ瞬間、何となく匂うものである。

 強迫観念に駆られて放ったシュート。姿勢をアピールしようとしたシュートにさえ見えた。

 一方、惜しいと感じたのは、大迫勇也が放った前半10分のシーンだ。ポスト左に1m近く外したが、インステップキックにしっかりとヒットしたよい球筋のシュートだった。同じく大迫が前半43分に放ったヘディングシュートも、惜しいと言える一撃だ。クロスバーを越えたが、がっかりさせられるシュートではなかった。

 シュートの本数は、試合を優位に進めていたか否かを語る時、物差しになる材料だ。18本放ったこの試合の場合は、「計18本放ちながら、流れの中で奪った得点はわずかに1でした」という言い方になる。そしてその結果、皆で一致して「決定力不足」を、声高に叫ぼうとする。そしてその内気と決断力の無さをみんなで嘆こうとする。何十年も続くお決まりのパターンだ。

 だが、ここで目立ったのは弱気ではない。変な強引さだ。そしてそれを背後で後押ししているのが、縦に速いサッカーであることは明らかだった。

 つづく

杉山茂樹  | スポーツライター10/8(日) 18:48
https://news.yahoo.co.jp/byline/sugiyamashigeki/20171008-00076678/